Event 1

□夏の友
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JADEの次回ジャケットは断崖絶壁の上
空中撮影からのショットらしくて。
私は勉強も兼ねて現地スタッフさんと
一緒に少しだけお手伝い。


――こうやって改めて見ると…皆さん
本当にカッコイイ…!


普段一緒にお仕事させて頂いている時は
気さくに話しかけて下さるから、あまり
そんな風に意識する事は無かったの。

だけど、やっぱり日本を代表するバンド
とまで言われてる皆さんはカッコ良くて
凄くカリスマ性を感じる。

長い手足、男性ならではの骨格。
私がああいうポーズ取ったって、あんな
風にはなんない。…当たり前だけど。

断崖の下から吹き上げる風が皆さんの
髪を乱す。それを無造作に掻き上げる。
スチルだからそのワンショットがどんな
風なのかは解らないけど、こうやって
見ているとどのショットも絶対に素敵!

そんな興奮状態で、皆さんから片時も
目が離せなかった。


この島はまだ真夏だから、崖の上とは
言っても、やっぱり熱くて。

ショットを撮り終わる度に皆さんの
汗を拭く。最初夏輝さんがそんな事まで
しなくてもいいよ、って言って下さった
けど、ただ付いて来るのも悪い気がして
現場を知っているだけに、細々とした
お手伝いをして。

少しはお役に立てたみたいで嬉しい。


「咲ちゃ〜ん!折角一緒に来てるん
だから、ワンショット撮ってみる?」

「え!…とんでもないです!」

「大丈夫大丈夫! ファンの嫌がらせが
怖いんなら、後ろからのショットで君と
分かんない様に加工するから!」

「…え、でも…。」

「ね? メンバーも嬉しそうだよ?」

「ややや! そんな!」

「ほら、咲ちゃんおいでー。」

「冬馬さん…。」

「冬馬君! お触りはナシね!」

「ちぇ――ッ」

「冬馬さん…。」

「咲ちゃん、冬馬の傍は危ないから」

「あっなっちゃんズルイ!」

「うるせぇな、仕事に集中しろよ。
長引くぞ? いいのか。」

「あ、ダメダメ!この後咲ちゃんと
海行くんだから!」

「皆で、だろ。お前とだけでなんて
危なくて夏輝も春も許さねぇよ。」

「当たり前だろ!」
「…当然だな。」

「ほらな。」

「え――!」


「あはは!君たち本当に仲がイイねー。
誰かマジで狙ったりしてないの?」

「狙ってるに決まってんでしょ、俺が」

「もう! 冬馬さん!」

「わー気を付けてよ〜?咲ちゃん。
冬馬君は相当女遊びしてるらしいから」

「ちょ…新谷さんまで何だよ!」

「共通認識だろ。」

「…大丈夫ですよ?冬馬さんお優しいし
何も酷い事なんてされませんよ?」

「…咲ちゃん!」

「きゃあ?! 」

「「「冬馬!」」」」


ガバッと冬馬さんに抱き締められ、
皆さんに後ろから引き剥がされる。


「ほらー、言ってる傍から!」


カメラマンさんもショットを決めながら
苦笑してて。
最後は楽しく皆さんで記念撮影みたいに
して…。天下のJADEのスチル撮影に
私も楽しく同行させて頂いたのだった。




***



「よっしゃ――――! 自由〜ッ!」

「…お前が自由じゃ無い時なんか
今まであったか?」

「…同感。」

「異議は無いな。」

「なんだよ、もー! で、あれ?
我らが姫は?」

「着替え。」

「もう来るだろ。」

「…あれか。」

「えー、なんでこんな常夏の国で水着の
上からパーカー?」


咲ちゃんが満面の笑みで走って来る。
その様子はちっちゃい仔犬みたいだ。
そう思うと可笑しくてついつい笑いが
込み上げて来てしまった。


「すみません!お待たせしました!って
え?…何で秋羅さん笑ってるんですか?
…私、何か変???」


きょとん、と俺を見上げる咲ちゃん。
その目はくりくりとあどけなくてさっき
頭に浮かんだわんころを彷彿とさせる。


――やべぇ、ツボに入っちまった。


何とか、ヒクヒクと笑いを堪えられずに
ヒクつく腹筋を力む事で無理に抑え込み
彼女の軽く結わえられた柔らかな髪を
くしゃくしゃと掻き乱した。


「あー、違ぇよ。何でも無い。」

「もう!秋羅さんっ髪ぐしゃぐしゃ!」


文句を言いながら膨れて髪を整えるのも
いつもの事で。俺は何の気なしに冬馬の
発言をチクッたんだ。
いつものノリで。


「冬馬が上からパーカー着てるって文句
タラタラだったぞ?…それ脱ぐ気が無い
なら、奴に無理矢理脱がされない様に
気を付けな?」

「えっ! ぬ、脱ぎますよ! 折角の海!
ですもん。この水着着たくて来たのに」

「…それもそうか。」

「そうですよー?」


俺はこの時、何で止めなかったんだと…
その直後に後悔した。

いつもの彼女なら照れ捲って、こんな
簡単に、その姿は晒さないだろう。

アレか? 海に来てて開放的になってる
ってヤツか?



それにしたってその水着は反則だろ。



って言うか、その水着の下のそのカラダ
…まさかあんなの隠し持ってたなんて
誰が思う?

…いや、彼女がスタイル良いのなんて皆
知ってる。そんなの…服の上からだって
判るもんだろ?

細い腰、その華奢な身体にして大きめの
バスト。腰から下は業界でも有名な位の
脚線美で。

だが、それは何処かお人形さん的な感じ
だと勝手に想像していたんだ。
彼女の性格やキャラはよく知ってるし、
全くセクシャルな気配なんてないから。



それが、どうだ。



本人はいたって普通に脱いだんだろう。
焦らしのテクニックなんて身に着けてる
筈もねぇ。

なのに。


ゆっくりと下ろされたように感じる
胸元のジッパー

現れたフリルの胸元


それから括れて柔らかそうな細い腰


その下の小さめのショーツ。


可愛らしいレースは付いちゃいるが
充分オンナの色香を感じるビキニ。




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