Event 1

□Pocky
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「とっととポッキー受け取って帰れ。」

「……。」
「……。」
「……。」


「あ、秋羅さん…?」


一瞬呆然としていた皆さんが
一斉にニヤニヤ。

…あ、あの……?



「悪い! 咲ちゃん、今晩
大変だと思うけど頑張ってな?」

「え?」

「秋羅、イイ誕生日を。」

「鋭気を養って来い。
…明後日の音を楽しみにしている。」

「じゃ。咲ちゃん、秋羅を
宜しくね。」

「俺が運転するんだっつの。」


そんな秋羅さんの呟きは聞こえなかった
ように皆さんが手を振って出て行く。
その手には大量のポッキー。
新作と限定とスタンダード、皆さんに
ちゃんと渡ったかな?

そう思いながらカゴの中を覗き込む。


「どれが美味い?」

「あ、このビターショコラが男性には
人気みたいですよ?」

「じゃ、それ。」


珍しい秋羅さんの甘い物の催促に思わず
笑顔になりながら箱を開け、1本を
取り出す。


ポキン。

すぐ様、彼の口で折られて短くなった
ポッキーを彼が食み、私の指まで。


「っ…!」


彼の柔らかで温かな唇が

私の指を

食む。



真っ赤になって彼を見つめる私に


「確かに美味いな。」


そう言って、ニヤリと笑った。

もう、オーバーヒートしそうなくらいに
真っ赤になってしまう私。

彼はそんな私を満足げに見て、更に
微笑み…耳元で囁いた。


「家でゆっくり味わせて貰おうか。」


そ、それって、このビターショコラの
ポッキーの事だよね?!


「色んな食べ方あるんだろ?」

「えっ?! あ、う、うんっ?」

「お前込みでな。」

「えっ?! あ、えっ!」

「ククク…動揺し過ぎ。行くぞ?」


ポン、と軽く頭を撫でられ、先に歩いて
行ってしまう。

私はそんな彼の背中を追い、彼に言う。
帰りに実家に立ち寄って欲しいと。
彼の為に昨日作ったケーキと、寒がりの
彼を想って編んだ手袋を取りに行きたい
から。まだ内緒なんだけど。

いつもは嫌な顔一つせず、実家に寄って
くれる彼が、ピタリと立ち止まる。
ぶつかりそうになる彼の背中。

ふと見上げると、苦笑した彼。


「これ以上焦らすと優しく出来ねぇぞ」

「えっ」

「実家に顔出して直ぐにじゃあって
訳にもいかねぇだろうが。」

「えっ、あ、」

「一旦ウチに帰ってからでもいいか?
…少し、遅くなっちまうかもしんねぇ
けど。」

「へ?…え、あ…!」


彼の言葉の意味に思い当たって、もう
これ以上赤くなったら弾けてしまう!と
思うくらい真っ赤になった私は、でも
それが嬉しくて。


「あの…わ、私も…あ、秋羅さんと
ゆっくりしたいから…あの、でも、
だからっ、今日…実家は…お父さんも
お母さんも出張で、だからまーくん、
今日はお友達の家に泊まる事になってて
…その、取りに行っても、その…直ぐに
出られるから…。」


俯いて真っ赤のまんまモジモジしている
私から殆ど空になったカゴを取り上げ、
その手を繋ぐ。

彼の、この大きくて温かな手が好き。
節くれ立った長い指、四角い爪、そして
何より、私の手も顔もカラダのあちこち
包んでしまう優しい手。

秋羅さんと同んなじで、ぶっきら棒
だけど優しいの。


そんな大好きな彼の誕生日。

ずっと待ってた彼の生まれた日。

一緒に過ごせて嬉しい。

一緒にこうやって居れて幸せ。

この気持ちの少しでも彼に伝えたい。


ねぇ、伝わってる?

この手を通して。

あなたと繋ぐこの手の嬉しさのあまり
小さく震える手から、この気持ち。


もう、夜を2人で明かすのも慣れている
筈なのに、彼と繋ぐこの手一つで、
こんなにも胸が震える。



大好きな秋羅さん、

お誕生日おめでとう。


来年も、またさ来年も一緒に。

おじいちゃんとおばあちゃんになっても
2人でポッキー食べ合えちゃうような
そんな2人で居ようね。







2014 AKIRA's Birthday!

Cheers! & ××× ♡







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