Event 1

□ダイキライ。
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真っ赤になって目の前で両手を振って。
否定したつもりだけどバレバレみたいで

そんな状態になってる時にやって来た
神堂さん。


「……何をやってる。」

「なっ、何も!!」

「咲…?」

「なっ何でもないんです! ただ、その
…っ皆さんが私を揶揄って…」

「そぅそ。咲ちゃん超素直
なんだもん。可ぁ愛いくってさー!」

「……。」

「冬馬、お前の心臓は鉄か?」

「…春、始めようか。」

「……ああ。」


あの日、神堂さんは機嫌が悪くて。
もしかして気付かれちゃった?! なんて
思った私は1人でパニック。
…でも、それだけで。

神堂さんは瞳の奥の不機嫌はそのままに
でも、感情を態度に出すことは無く…
クールに打ち合わせを済ませた。

あの日から暫く、私は1人ギクシャク
しちゃって。神堂さんがいつも通りなの
だから、きっと何も気付かれてないか、
気付かれてても神堂さんにとっては
大したことでは無いって事かもしれない
…なんて考えては落ち込んで。

それを乗り越えてのライブだった。
そしてその打ち上げで。

だいぶお酒も入った頃、子供みたいに
目をキラキラさせた冬馬さんが私の横に
座った。


「んね、咲ちゃん。もう直さー
エイプリルフールあるじゃん?」

「あ、そうですねぇ…はやぁい、もう
4月なんですねー…そっかぁ早いなぁ」


数杯重ねてしまったカクテルのせいで
ほわんほわんした私は、間延びした言葉
しか出なくて。


冬馬さんはそんなフワフワした私を
察したのか、肩を支えてくれながら
コショコショとナイショ話みたいに
声を潜めて。


「(んね、ちょっと俺のイタズラに
乗ってみない?)」

「とうまさんの、イタズラ…?」

「(しぃッ、咲ちゃん)」

「…ナニ危ねぇ話してんだよ。
冬馬の悪戯なんてヤバ気なキーワード
その体勢で発してたらココが氷の城に
なっちまうぞ?」

「あきらさん…?」

「おーお、出来上がっちまってまぁ。」

「…お前らいい加減にしろよ。
春が急降下だぞ。…咲ちゃん、
大丈夫? 俺 酒入ってないし家まで
送ってくよ。」

「なつきさん…ありがとーございますー
でも、だいじょーぶです、よ?」

「いやいやそれ、大丈夫じゃねぇから」

「仕方ねぇなー、俺らもなっちゃんの
車へGO!だな。」

「お前らはタクでも拾えよ。」

「やだ、なっちゃん! 咲ちゃんと
2人きりでオオカミになっちゃったら
どーすんの!」

「なるか!」

「断言出来るか?」

「洒落なんない事言うな。ほら、春が
睨んでるだろ! あーもう! 皆車乗れ。
順番に送ってやる。」

「さーすがリーダー。」

「(あ、なっちゃん、春サマ最初に
送ってな?)」

「(…何企んでんだよ。)」

「(いーから、いーから。)」

「おい、お前ら。気付けよ。
ブリザード吹き荒れる1秒前だぞ。」

「あ、やべ。」


そんな会話と共に追われるようにして
夏輝さんの車に乗り込んで。

神堂さんを降ろしてからこの計画を
冬馬さんに持ちかけられたのだった。




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