Event 1

□make SURE
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とあるお店の奥の席に案内されて。


「…こ、ここ、初めて入るんだけど…
何か凄く高級そうじゃない…?」

「んーまぁそうね。イギリス王室御用達
茶器の専門店なんだけど、ほら正式な
アフタヌーンティーとか出来るの。
咲ちゃん好きそうだと思って。」


スッと出されたメニューは凄く綺麗な
箔押しの紙に筆記体(下に説明書きも
一応あるんだけど)で書かれてて。

でも、写真のセットとか凄く素敵!


「わぁ…♡ 」

「ね? 好きでしょ?」

「うんっ! 大好き!」

「…っ……この子は本当にもう…っ」

「え?」


豪華さとあまりの素敵さに嬉しさを隠し
きれずについ満面の笑みでモモちゃんを
見上げると、少し困ったような笑顔を
返される。


「モモちゃん…?」

「好きなの頼んじゃって? 実はココ、
前々から連れて来たくて。まだまだ穴場
だから客層も悪くないしね。」

「そんなに前から知ってたの?
教えてくれればよかったのに。」

「だぁめ。アタシが連れて来たかったの
…そのココロ解ってくれるかしら?」

「…?」


グイッとモモちゃんが顔を寄せる。

な、何か、近く無い?
今更だけど、小さめのテーブルなのに
向かい合わせじゃなくて斜めっていうか
角を挟んで隣で…窓の景色が見えるって
言えばそうなんだけど。

よくよく見れば、見れば見るほど整った
モモちゃんのお顔に恥ずかしくなって
視線がソワソワ。


「(…意識はしてくれてるみたいね?)」


ぽそりと何か小さな声で囁かれて、今、
ぽー…っとなっちゃってた私は慌てて
訊き返す。


「え…、今なんて?」

「何でもなぁい。」

「モ、モモちゃん?」

「ね、好き?」


ジッと視線を合わせて見つめられ、
その普段メイク室で見る事の無い表情に
ドキッとして。


「ぅ、あ…、っな、何が…?」


もう完全に挙動不審の私。
掌は汗でびっしょりだし、何だか顔も
赤くなってるのが自分でも分かる。

しかも涙も出ちゃいそう。


どうして?


「アタシは大好きよ?」

「へぇ…っ?! 」


スルリと伸びて来た手が私の掌を掬い、
指を絡める。

その手は大きくて硬く、指も長くて。
明らかに男の人の…手。


「可ぁ愛い♡ 汗掻いちゃってる。
なぁに? 緊張しちゃってるの?」

「わ、わたし…っ」


慌てて手を引こうとしても指を絡められ
ちゃってて、動かない。


――わたし、てのひら…っ


唯でさえ汗をかいた手を触られて、もう
パニック!なのに、モモちゃんったら
親指の先で掌をコチョコチョするからっ

その指先が擽ったくて、でも何かっ
ヘンな感じで…っ

もっともっと血が上って顔が真っ赤に
なっていってるのが分かる。


「ね、咲ちゃん? 今日折角のオフに
わざわざあのお店に居たのは何故?」

「…えっ? そ、それは…っ」

「『プレゼントを買いに来た』?」

「っ、な、なんでそれを…」

「あ、当たった?
じゃあやっぱりコレ、アタシの?」


顔の横でさっきの雑貨屋さんのお洒落な
紙袋を2つ揺らすモモちゃん。


「え、あ、ぅ…、そ・そう…。」

「ちゃーんと私の好み、把握してくれて
いるんだ? 見た時嬉しかったぁ…。」

「ホ…ホント?」

「うん。だって一足お先にお店の中、
見て回ってたアタシが持ってる物を
選ぶんだもん。嬉しくって。」

「えっ、じゃあ知ってて自分で
買っちゃったの?」

「そ。実は下心あるからね。」


そう言ってウィンク。

お茶目だけど、何処かよく知るいつもの
モモちゃんと違う気がするのは何で…?




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