Event 1

□アトノマツリ
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RRR…RRRR…RR

『おい、何やってんだよ。冬馬が来ない
って俺の方に矢の催促なんだけど。』


さっきから鳴りっぱのスマホ。
秋羅のだけは洒落なんないから取って。
そしたらやっぱ今夜の件。


――…はぁ…。


『…なぁお前、どーしたんだよマジで。
何か此処んトコずっと…ちとばかし様子
可笑しくねぇか? 腹イタか?』

「子供かっつの。」

『…ある意味似たようなもんだろ。』

「シツレーしちゃう秋羅サン。」


適当にあしらおうとしたの多分シッカリ
伝わってて、ちょっと低くなる秋羅ン声
…あー…コレ、やべぇかなー…。


『で、どうすんだ行かねぇのか?
…だったらそれはそれで連絡しろ。』

「あー…うん。」

『何だ、マジで行かねぇのかよ。』

「え?…あ、いや…。」

『ハッキリしろよ。それによっては俺
もう1箇所連絡しなきゃなんねぇし。』

「…は?」

『咲ちゃんもお前に届けもんする
っつって今夜連絡待ってんだよ。』


――え…? 何で咲ちゃん?!


「え、ちょ、ま…っ、何で彼女が?!
つか、何届けもんって、つか、何で
お前が彼女に連絡…っ」

『ククク……ッ、落ち付け落ち着け。
なんだやっぱそうか。お前の最近のその
ブルーの原因。』

「な…っ」

『あのな…彼女去年、お前のパーティの
あの場の雰囲気に飲まれて結局渡せない
まま帰っちまって、今年はそれで会場に
行くか行かないか相当迷ってたみたい
だぜ?』

「へ…?」


――今の空耳?

去年 クラブに 彼女が 来てた…?
え、まさか。

咲ちゃんが来てて、気付かないとか
有り得無くね? …つか絶対あの場の
野郎連中はまず黙ってねぇんじゃ…。


『何だやっぱりお前、何も知らされて
無かったのか。』

「何だよ、やっぱりって!」

『アレだろ、女の嫉妬。』

「は?! 」

『こないだの彼女の様子から察するに
そんなこったろうと思ってたけどな。』

「へ?」

『去年、仕事終わりにお前のパーティが
どんなもんかも知らずに会場までケーキ
持ってったらしいぜ?』

「え、でも俺貰ってね…」

『あー…「手作りケーキなんて場違い
でしたよね、私…冬馬さんの…芸能人の
お誕生日パーティがどんなものか…良く
解ってなくて…」つってたぜ? 大よそ
お前の女どもに揄(からか)われたんじゃ
ねぇの?』


――想像出来る。

『えー? 冬馬に手作りのケーキぃ?』
『きゃーマジで! 重っ』
『お子様ぁー!』

きっと去年のメンバーじゃその辺り。

今年のお誘いはお店の絡みもある嬢たち
だから、きっとそんな風にはしない。
しかも彼女は今や、すっかり一流とも
言える芸能人の一員で、CM女王とも
言われる子で。

でも去年なら…、ましてや去年のあの
メンバーだったら…。

クラブの常連の、謂わばノリのイイ、
ケツの軽いビッチちゃん達。
所謂パンピー、別名カキタレ。
(注:カキタレ=ヤるだけ目的の女の子)

もう今年はあのクラブ顔出して無いから
全然会って無いけど。


そこに彼女が?
俺のケーキ持って…?


あ、そういや彼女は去年の今頃映画の
ロケで忙しくしてて。丁度春のレッスン
にだってあんまり来れてなくて。

…思い出した。


それなのに?

俺の為に、夜中のパーティ会場にまで、
足運んで?


そんで折角作って持って来てくれた
手作りケーキ渡しもせずに追い返されて


そりゃ、後日その話に彼女が触れなくて
当たり前…っ




*
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