Event 1

□敬称略のラプソディ
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「一磨ー、誕生日おめでとうー!」

「おめでとうございます! 一磨さん」


俺らの冠番組のバラエティでの本日の
ゲストは咲ちゃん。
偶然なのに、それこそが縁な気がして
嬉しい。勿論口には出さないけど。


メンバーとゲストの咲ちゃんと
客席のファンに祝われる誕生日。

暖かな拍手と雰囲気に、嬉しくもどこか
照れ臭くて、つい首元に手をやり頭を
下げた。


「あはは、一磨照れてら。」

「うちのリーダーはこう言うのあまり
慣れて無いからね。」

「まーね、どこかの誰かさんと違って
お誕生日に沢山の女性に囲まれての
パーティなんてし慣れて無いしね。」

「何、亮ちゃん何か言いたげだね?
わざと皆(咲ちゃん)の前で俺を
落とそうとすんのはやめてくれる?」

「おい、やめろよ。」

「今日の主役に心労をかけるな。」

「もう、亮太くんと京介くんって、
仲が良いんだか悪いんだか…」

「ちょっとやめてよ、咲ちゃん。
何処を如何したら仲良しに見えんの。」

「メンバーなんだから仲良しだろ!」

「翔ちゃん…」


ゲンナリした亮太の声をマイクが拾い、
それも全てシナリオだと思ったのか、
客席から笑いが起こる。
亮太と京介の掛け合いはいつもの通りで
咲ちゃんも微笑ましく見てるけど
時々黒い空気を纏う亮太と、それを知り
ながらわざと茶化す京介のやり取りには
よくヒヤリとさせられる。
下手をすれば言葉尻を良いように弄られ
『Wave内部分裂?! 』などと言った拙い
記事に成り兼ねない。

でも今日は咲ちゃんも居て、俺の
誕生日でもあり場の雰囲気はほのぼのと
しているから全然マシだけど。


「はーい、誕生日の一磨にはこの番組内
王様の権利が与えられます。何かして
欲しい事があれば…そうだな、ゲストの
咲ちゃんが代表で叶えちゃう?」

「ちょっと、京介! 何勝手に…」

「いいですよ?」

「咲ちゃん?! 」
「ちょ…っ、そんな簡単に…っ」

「え?」

「やーだなーぁ、翔ちゃん亮ちゃん
何ヤラシー事考えてんの?」

「ええ…っ?! 」
「「「京介っ!!」」」


咲ちゃんの困惑した声と
俺と翔と亮太の声がハモる。

ニヤニヤとした京介。
会場のキャーッ!と言う声。


「…落ち着いて。
一磨がそんな事言う筈が無いだろう。」


義人が溜息混じりに呟き、その場は
何とかサラリと流れたから良いものの。

…まったく。


「あ、あの、じゃあ、一磨さんが
して欲しい事って?」


なのに咲ちゃんがそんな風に、
小首を傾げて言うから。


「…え……」

「(一磨、番組。)」


咄嗟に詰まってしまった俺にボソリと
マイクに入らない様に呟いた亮太。

――…ッ、分かってる!


「じ、じゃあ咲ちゃん!
俺らのミュージカルの宣伝を宜しく。」

「あ、はいっ! えっと、もう始まって
いるんですが………」


咄嗟の振りにも動じず、綺麗に纏めて
ミュージカルの宣伝をした咲ちゃん

…やっぱり彼女の成長力は凄い。
以前ならまだオロオロオタオタしてて
(そこが可愛らしくもあったんだけど)
俺が手を貸していたのに。

そんなちょっと保護者みたいな気持ちに
なりつつ、見守って。

会場に来ていた子たちにはきっと予定で
仕組まれてた宣伝だと思った事だろう。

そんなこんなで。
番外で俺のバースデーを祝ってくれた
番組も掃けて(終わって)。

遅い時間の収録だったから、皆これが
今日の最後の仕事で。
少しまったりした楽屋での時間。
衣装から私服に着替え、生真面目にも
帰りの挨拶に来た咲ちゃんも交え
ちょっとした打ち上げ。
と言っても有るのはご馳走では無く、
局弁(弁当)と番組で使った、皆で分けた
後のケーキの残骸なんだけど。

それでも後の時間に追われてない楽屋は
暫しの休憩時間を満喫してて。
珍しく…山田さんの迎えの無いと言う
咲ちゃんも一緒の楽屋はやっぱり
ほのぼのしてて。



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