Event 1

□スペシャルDAY
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決意も新たにそんな事を思ってたのに。

律儀な咲ちゃんは翌日の収録に
早速お祝いを持って来た。
それはこないだ楽屋で話題になった時、
何かのついでみたく話した、俺が最近
ハマったパズルで。

あれ? こんなに詳しく話したっけ?
なんて俺自身が疑問に思う程サラリと
メンバーに流された話題だったのに。

彼女はちゃんと覚えててくれてたんだ。

それは宝箱。
クリスタルのパーツを嵌めてって作る、
パズルで出来た宝箱なんだけど。コレさ
ちゃんと綺麗にハマれば最後ネジ一本で
固定されて、ちゃーんと中に小さな物が
入れられるんだ。しかも鍵付き。

最初に作ったのは、アニメのルパンが
乗ってたみたいな車。なかなか難しくて
途中何度も挫折しかけたけど、パーツが
パチリとハマった瞬間、何とも言えない
快感で俺自身がその快感に超ハマって
しまった。今は未だ3個目なんだけど、
車の次は簡単そうに見えた、真っ赤な
りんご。これも途中で何度もイーッて
なって、投げ出しそうになりながらも
完成して。で今、家で挑戦してるのは、
スカイツリー。下から照らすライトと
一緒に買ってて、出来上がったら部屋の
インテリアとして使うつもりで。
でも、コレが思った以上に難しくてさ。
まだ家のテーブルにとっ散らかった状態
のまんま絶賛放置中。

そんな話を、したんだ。

彼女はそれがどんな物かも知らなかった
から、俺は写メってたのを見せて。
京介や亮太には「画像ググれば良いのに
ワザワザ自分の作ったの見せるあたりが
翔は狡(こす)いなー」なんて言われつつ
話題はサラリと流されて。

それの、俺が話した次にやってみたいと
思ってた宝箱を彼女が買って来てくれて
しかも、色違いの2つとも。


「翔くん、売り場にあった見本の物を
ちょっとだけやってみたんだけど私には
無理! 凄いねぇ。また出来上がったら
見せてね?」って。


あのスペシャルな笑顔付きでキラキラの
クリスタルパズルを差し出した。
彼女の手作りケーキと共に。

パズルなんかよりずっとキラキラした
彼女に、俺の目にはキラキラの残像。

昨日、あの後コレが置いてる店探して
立ち寄ったの? 昨日久々に早上がりが
出来るって喜んでたのに?

しかもケーキまで!

彼女のケーキはホント美味しくて。
見た目も味も本当に町のケーキ屋さん
みたい。都会のパティシエっぽいのじゃ
無くて、町のケーキ屋さんなのが彼女
らしくてまた可愛い。

箱を開けて感激してる俺に、メンバーが
後ろから覗き込んで来るからガードして

1人用の小さなケーキだからな!
やらないぞって言ったら、彼女が少し
申し訳無さそうに「ゴメンね、昨日沢山
ケーキ食べたかなーと思って…なるべく
小さな物を焼いたんだけど、どうせなら
皆さんで分けられる方が良かったよね」
なんて言うから。


「違…っ! 大っきいの貰っても絶対
誰にも分けないよ! 俺の!」

「翔ちゃん、それはどーなの。
ケーキすらメンバーに分け与えられない
って器量の狭いオトコってなっちゃうん
じゃない?」


そんな目からウロコな亮太の呆れ声の
発言にドキッとして。


「えっ!」

「えっ、や、そんな事思わないよ!
ぜ、全部食べてくれるって言ってくれて
るんだよね?」

「そ、そう! ケチで言ったんじゃ無い
んだからなっ!」

「ハイハイ。どっちにしろ今回のは
1人用なんだから、そんなムキになんて
なんなくても取らないって。
…なーんて、イタダキ♪ 」


京介が傍から取ったのは、彼女がして
くれたデコレーションのイチゴを1つ
パクリ!


「ア――――ッッ!」


咄嗟に手を伸ばした時にはもう遅くて
京介の奴、ゆっくり咀嚼してニヤリと
笑いやがった。


*
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