Event 1

□BookshelfA
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【 BookshelfA 】
(ブックシェルフ=本棚)


誕生日前夜、彼女から貰ったヌメ革の
ブックカバー。色合いも良く、丁寧に
鞣されたその上質なヌメ革はこれまた
丁寧な手縫いの縫い目で縫われていて。

彼女の気遣い、俺への愛情。
そういったものが詰まった彼女からの
プレゼント。
俺は早速今読んでいる最中の本に、その
カバーを掛けていて、それを触っては
密かにニンマリ。

興奮も冷めやらぬ状態だったからか、
早朝から目が覚めてサイドテーブルに
手を伸ばし、そんな事をしてる俺の
横には彼女。

…彼女はまだ眠っている。
俺と一つのベッドの中、今直ぐにでも
触れ合える距離で体温を分かち合って。

シーツの合間のカラダには着衣。
彼女は俺の貸した部屋着姿。
小さな彼女でも着れる様にと、なるべく
ピタリとした素材のロンTと、貰い物で
殆ど着た事の無かったハーフパンツを
貸したのに、それも大きくて。

ダボダボのロンT
脛も半分隠れてるハーフパンツ

昨日、これを着た彼女を見た時は本気で
ヤバかった。

ダボダボの袖を捲り上げ、そこから
見える細い手足、肩関節の形の見える
華奢な肩のライン、それからこんなラフ
な格好だと却って目につくたわわな胸。


そんなものに煽られて、危うく野獣化。


――そう『危うく。』…つまり、俺は
昨夜彼女とベッドを共に…同じベッドに
入りながら、手を出さなかった。
…SEXという意味では。

キスはした。沢山。
それこそ数え切れないくらい。


『誕生日、一緒に過ごしたい。
誰よりも先に君に祝われたいし、
言われたいし、傍に居て欲しい。
…これは、叶う?』


そう、何でも言う事を聞いてくれると
言う彼女曰く『誕生日の我儘』を発動
した俺の願いを聞き、彼女は本当に
その日、うちに泊まった。

正直言えば、彼女がうちに泊まるのを
OKした時点では一線を越える事への
期待があった。好き合ってて、ついに
想いも交わし合った男女が夜を共にする
んだから…勿論そんな流れになってくん
だろう、と。


…俺の考えは甘かった。

相手は純情可憐な天然の咲ちゃんで。
俺の邪(ヨコシマ)な想いなんて思いも
しないみたいで。


「あの…お泊まりするとは思ってなくて
着替えも何も持って来て無いんだけど…
何か着るもの借りてもいい?」


そんな…モジモジと顔を赤らめて言う
様子にゾクリときた。直ぐにでも彼女の
その華奢なカラダを抱き締めて、辿って
全てを暴いて…そんな事を思った位。


――着るもんなんて無くてイイ。

素肌で2人温め合えば、着る物なんて
何も要らないし、それ所か邪魔。

そう思って。


だけど、気付いたんだ。
一つの危険性。

この部屋にゴム(避妊具)は無い。

数年前、ほんの少しの間付き合ってた
女性が居た時は買い置きもしてたけど、
それはもう数年も前の話。
しかも当時はこの家でも無かったから…
引っ越す時に何処に仕舞ったのかすら
記憶に無い。

それにもしあったとしてもそんな数年も
前の物なんか彼女に使える訳がない。
…あの手のモノの消費期限がどの位か
なんて知らないけど。怪しげな状態な物
なんて彼女に使う訳にいかないし。

そんなことに気づいて。
でもそれと同時に…もう一つの事に
気が付いた。

彼女の反応。

『お泊り』という割に取り乱してない、
と言うか…俺の予想では初心な彼女の
事だから、きっと凄く恥ずかしがって
俺が大胆にリードでもしていかないと
いけないだろう、と何となく予想して
いた。それこそ照れ屋で緊張し易い彼女
だからガチガチだろうと。

なのに、この…照れてはいるけど…多少
緊張もしてる様だけど…ガチガチでは
無いこの様子。


――もしかして、経験アリ?
他の男と……。

ガーン!そんな効果音(心理音?)が
頭一杯に聞こえた気がした。



*
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