Event 1

□Foolish
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「おはようございます。」

「おっはよー!」
「おはよう、時間通りだね。」
「ハヨ。」

「…来たか。」

「あーい、咲ちゃんどーぞ♡」

「えっ、あ、はい…っ」


手渡されたココア。
それはよく夏輝さんが下さるもので。
それを冬馬さんから渡されて、思わず…
身構えてしまった。

でもそれが失礼な事だと思い至って
焦ってしまう。


「あっ、ありがとうございます!」


カキッと開けて、すぐ口に運ぶ。
それは思ったよりも熱くて。
猫舌の私には、かも知れないけれど。


「…あッ!」

「ちょ、大丈夫?! それ今買ったトコ
だから熱かったろ?!」

「ふみまふぇん…」


唇と舌先がヒリヒリしてて。
缶も結構熱かったのに、何で私気付かな
かったんだろう。そんな事を情けなく
思って凹んで。

即行で冷たいお水を買って来て下さった
夏輝さんにお礼を言って、一口含む。


「…珍しいね、咲ちゃん猫舌
なのにあんな飲み方なんて…」

「ほんとほんと、カキンって開けて
グビッだもんなー。止める間もなく。」

「や、あの……すみま…」


居た堪れなくて、冬馬さんの顔が見れず
俯いたまま。そんな私に苦笑した声で
頭をワシャワシャにするのは秋羅さん。


「お前のせいだろ。」

「え、何で俺ぇー?」

「珍しくお前がココアなんて渡すから
警戒したんだよな? 今日が今日だし。
…もしかしなくても、今日は今まで
騙され捲った後か?」

「う……。」

「やっぱな。冬馬のココア受け取った
瞬間、すっげぇ顔してたもんなぁ?」

「は?」

「すっ、すみません! つい…っ」

「ええーっ?」

「――冬馬、お前が悪い。」

「違…っ、私が勝手に…っ」

「今までが今までだからでしょ?
冬馬が悪いよ。」

「何だよ、皆して! 俺はあれだろ、
去年までのを反省して咲ちゃんの
好きなココア準備して待ってただけだろ
それの何が悪いんだよ。」


「「「日頃の行い。」」」


「あっ、クソ! こんな時ばっかり
息ピッタリ合わすなよ!」

「冬馬さんごめんなさいっ!
疑ってるつもりは無くて!…えっと、
いえ、少しは…その、無意識についっ、
疑ってしまってたかも知れないんです…
けど…っ、そんなつもりは無くて!」

「いやいや、仕方ないよな? 去年迄に
された事考えたらそうなるって。」

「…だよな? 何だっけ、去年の…ああ、
そうだ。春ののど飴の中身が全部小さい
リアルな蛙のグミになっててさ。春も
知らずに咲ちゃんにあげたら…」

「「開けた瞬間大絶叫!」」

「アレ大変だったんだぞー?
あの蛙グミ、特注だかんな?
しかも春の目を盗んで全部包み直すのに
どんだけ手間が掛かったか…」

「じゃあ遣るな。」


「それにアレもあったぞ? 懐かしの
ブーブークッション攻撃。咲ちゃんが
座る所座る所あらゆる場所に仕掛けて
あったな。最後は夏輝と春の車の助手席
にまで。お前は小学生か。」

「ほんっと、好きな子をいじめるとか、
ガキだよな。」

「――ちょ、なっちゃんっ!
何さり気に言っちゃってんの?! 」

「って、自分でもバラしちゃってるし。
…まぁ、そういう訳でさ、今年は皆に
怒られて反省してのココアだから。
咲ちゃん安心して飲んで?」

「へ?…え、あ、はい…?」

「あ、ダメだこりゃ。全然脈ねぇぞー?
どうする、冬馬? 諦めるか。」

「クソッ、楽しそうに言ってんなよ?」

「…そろそろレッスンに入るぞ。」

「あっ、はい!」

「待って、咲ちゃんっ!
――舌、大丈夫? 見せて?」

「へ? え、や、大丈…」

「はい、ベーして?」

「え、は…い…(ベロを出す)」

「あー、赤くなってんなー。
まぁこん位なら、舐めときゃ治るか。」


ぺろり。



――……ッ?!?!?!




*
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