Event 1

□黒猫の想い
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俺の誕生月に入ってから、いいや、
その前の月からよく携帯を片手に溜息を
吐く彼女を目にして。

最初はどうしたんだろう、俺には相談や
言えない事? なんてブルーになった。

でも、彼女の視線は何時だって俺からは
逸らされること無く。

彼女の愛は感じられる日々。

だから変にまた自分を追い込んでしまう
前に、勇気を出して訊こうと思って。
そっとソファに座る君に近付く。

君はいつも俺の足音がしない!って
驚くけど、今は真剣に気配を消して。

不意打ちに抱きついて、驚かせて、
そんな無防備な君に尋ねよう。
何に悩んでいるのかを。


ところが


ソファの後ろから覗き込んだ俺の目に
映ったのは男物の商品を表示し、考え
ながらスクロールする(表示を次へと
送る)…君の綺麗に整えられた爪。

黒を基調とした服や小物、それらは
公的に俺のイメージとして言われてる
テイストに近くて。

決定打は、彼女がスワイプ(画面を滑る
様に操作)して出した俺の記事。

確か、バレンタイン用にインタビュー
されたヤツだ。…それを見ては、また
スワイプして商品画像を見る彼女。

ああ、そうか。
俺の誕生日に贈る物を悩んでるんだ。

そう気付いた時の…俺の歓喜、分かる?


もうその場で押し倒したいくらいに
愛が溢れて。

でも、彼女が真剣に俺のこと考えてる
この時間を邪魔したく無い。
だから、そっと知らない振りで元の場所
まで戻って。

何も気付いてない体で彼女に声を掛ける
ほんの少し笑みは漏れてしまうけど。


「咲ちゃん、コーヒー飲まない?
たまには俺が淹れてあげようか。」

「えっ、京介くん? いいよ、疲れてる
でしょ? 今日も朝からロケだったし。
私が淹れるね。…と言ってもこないだ
買ってくれたコーヒーサーバーが全部
してくれるけど。」


なんてニコニコ。
そんなコーヒーサーバーだから、俺でも
淹れられるのに。彼女は俺の世話をする
のが好きみたいで。こういう風にお願い
されるととても嬉しそうに笑う。

――ああ、愛されてる。

そんな日常の一コマ一コマが彼女の愛を
ちゃんと俺の心に刻んでくれて。

俺はもう間違わないし、迷わない。
毎日毎日そんな事を呪文の様に唱えてた
けど、そんな物ももう必要無い。

それ位彼女の愛は俺を満たしてるから。

コーヒーサーバーに向かう彼女の背中を
目で追う。そして、目で追うだけでは
飽き足らず、近付いて…背中からそっと
抱き締める。


「もう、京介くん、危ないよ?
お湯を扱うのに。」

「うん、ごめん。
でも…こうしてていい?」

「(クスッ)子供みたい。…うん。」

「じゃあ子供じゃ無いコト、しよっか」

「え、ちょ…っ、と、待っ?! 」


そっと抱き締めた彼女のの背後から、
指を手を其処此処へと這わせる。

もう知らないトコの無い、彼女の敏感な
部分を優しく刺激して。

俺に触れられ尽くしてる彼女はほんの
少しの刺激にも敏感で。


ほら、こうして服の上から撫でるだけで
胸の先も勃ち上がる。太腿を撫でれば
それだけで甘い声。


「…っ、もぅ…っ、きょ…すけくんっ」

「ね、ベッド行く?…それとももう、
ココでする?」

「ヤだ…っ、だって、コーヒー…」

「まだセットしただけでしょ?
明日の朝、夜明けのコーヒーにしようよ
シーツに包まってさ。」

「ん…っ、もお…っスグそんな…あッ」

「ほら、咲のココはもう
我慢出来ないって言ってる…」

「や…っ、ヤ…やぁん!」


ちゅぷんッと飲み込まれる俺の指。
そこはもうすっかり蕩けてて。

口端に笑みを履き、俺はさっきの彼女の
見てた画面を思い出す。

あんなインタビュー記事なんかより、
君の方が俺の事よく知ってるのに。

世間で言われる俺のイメージなんかより
君が感じる俺こそが俺。

そう、世評では黒豹とかって例えられる
俺だけど、君の傍では唯の黒猫。
君に甘え足に擦り寄り、君の膝で撫でて
寝かせて貰って喉もゴロゴロ。

君に鼻を摺り寄せて、その頬を舐めて
キスを貰って。

その優しい手で俺を撫でて癒して
捕まえてて。

君にだけは腹を見せ、ずっとゴロゴロ。


ああでも、
今みたいに君に甘えて君の中に挿れて
貰う、その時だけは黒豹で居たいかも。



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