Event 1

□マイラバ
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「…咲? ただいま。」


――あれ?

…可笑しい。
電気も点いてるし空調も点いてる。

いつもなら先に帰ってたら絶対笑顔で
走り寄ってくる彼女が出て来ない。

料理中?
…でも、だったら声くらいは返る筈だ。

今までの経験上無かった事に一瞬不安が
過ぎり、慌てて靴を脱ぎ部屋に上がる。


「咲…っ?! 」


バタバタバタッ!

倒れてる、とか色々不安な映像が脳裏に
浮かび…足音を響かせ、先ずキッチンが
見渡せるドアを開ける。

そこには彼女が準備した料理の数々。
でも、火は消され、鍋もガラスの蓋に
蒸気は付いているものの、つい今まで
そこに居たって気配では無い。


――え、何か買い出しに行った?

いや、でも彼女が電気も点けっぱで出た
事は無く。この違和感に更に慌てて
リビングへと駆け込む。


「咲っ?! 」


「に……にゃあーん…っ」

「っ…?! 」


ミィのともまた違う猫の鳴き声。
…いや、『猫の鳴きマネ』?

声につられて、咄嗟にその方向に目を
向ければ…不自然に膨らんだカーテンの
後ろから顔を出す、咲。


「……咲…?」


彼女が居て、見つけて、ホッとして…
でも何で彼女がそんなとこでこんな風に
顔だけ出してんのか分かんなくて。

リビングのテーブルの上には数々の料理
…それは全部俺の好きなものばかりで。

こんなにも俺の誕生日祝う気満々!って
状態なのに、何で隠れて…?

そこで気付く。
彼女の頭に…白いカチューシャ。
猫耳の。


――え…?


「き…きゃ――っ! し、神堂さん?!
なななななんで…っ」


真っ赤になって慌てて、グルンッと
更にカーテンを巻き付け隠れてしまう
咲。


――え…? あ、そうだ。

今日は最後スポンサーとの打ち合わせで
珍しく春の車に同乗して行ってて…
そんで今日、渡し忘れてた新しいスコア
渡そうと玄関先まで春も一緒に上がって
貰って来てたんだった…!

春は咲が俺の誕生日の準備もして
待って居るだろうから、と遠慮したのを
直ぐ持って来るからって誘って。

それを、玄関先で取り乱した俺の様子に
只事では無いと心配して一緒に上がって
くれてたんだと、漸く頭が追いついて。


「…すまん。スコアは明後日受け取る。
――邪魔したな。」


咲の視線に振り返り、珍しい春の
真ん丸目を目の前で見て、固まった俺。
そんな俺の目の前で、暫し呆然と立ち
竦んでた春は急に我に返ったように
真っ赤になって、クルリと背を向けた。
…その耳は赤い。

呼び止める間も無く、スタスタと豪速で
リビングから消え、人気の無くなった
廊下の先からガチャン、と玄関の閉まる
音だけが響く。

さっきの春に負けず劣らず呆然としてた
俺は、頭の中で今の状況を整理して、
そっとカーテンの中を覗き込み、可愛い
俺のPussycat(にゃんこ)に声を掛ける。


「…咲、ごめん。
春は帰ったよ。出ておいで?」


そっと捲ればそこには…

真っ白でモフモフとした猫のコスプレ、
しかも上下の別れたセパレート。
手にも足にもロング丈の白のモフモフ
手袋靴下肉球付き。


…しかも、ミィと同じ赤い首輪。


そんな出で立ちの咲が…
床にぺたんと座り込み、恥ずかしさで
上気した目元、うるうるした瞳…
そんなんで俺を見上げてるから


――かっ…(可愛い……ッッッ)

もう勝手に興奮度MAXの俺。

なんだコレ
どーしたんだコレ

え、これって咲が自主的に?
それってもう、直ぐ様『イタダキマス』
して頂いちゃってもイイって事?

そんな事が頭ん中をグルグルと。

きっと俺の目、確実に野獣。
ギラギラと獲物を前にして、
完全ロックオン。

そんな様子で彼女の前に屈み込めば
ビクリ、とまるでオオカミに狙われた
仔ウサギみたいな君。

いや、猫か。
真っ白でふわふわモフモフの
俺のPussycat。

可愛い堪んないどうしてくれよう

そんな事がもう頭ん中グルッグル。


「……イタダキマス。」

「え……? やっ、えっ?!
なっ夏輝さん…っ?! 」


可愛い可愛い俺の Pussycat
骨まで残さずペロリと平らげ、
君を頂く。

俺は狼よろしく耳まで口裂け、
君を頭からガプリ。
傷一つ付けずに丸呑み。

ね、いいから俺に食べられちゃいなよ。

全部全部。

君の準備してくれた手料理も
何処のケーキ屋にも負けない
愛情てんこ盛りの手作りケーキも

全部


可愛い君
愛しいモフモフ
真っ白でふわふわ。

そんな君も全部


俺のものなんだよね?


イタダキマス
何時だって君に関しては俺の選択は一つ

全部全部食べさせて。
骨の髄まで全部。


愛しい人

可愛い My lover


恥ずかしがり屋の君が
こんな事までしてくれる、

俺はなんて愛されてんだろう。


唯の惚気だ
呆れたきゃ呆れろ。
笑いたきゃ笑え。


俺は心底幸せだ。






Happy Birthday NATSUKI♡
2016.06.06 xxx

溢れ過ぎた愛を込めて♡









end.

《 後日談 》
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