Event 1

□キラキラキラA
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「彼女と心を通わせた。」

「え…?」

「やっとか。」

「動くと早ぇな、流石春サマ!」

「え…、ちょっ、今? えっ、今この
タイミングで? ってか何があったんだ
…って、いや、さっきの春の様子から
予測するべきだった…のか?」

「先手必勝ってか。」

「あー春サマ相手じゃ勝ち目無ぇなー」

「つか、最初から勝負は決まってるだろ
…って、夏輝…大丈夫か…?」

「いや、そりゃいつかは…って予想
してたけど、まさか今日?
このタイミング、って何だよって…」

「あーあ、なっちゃん、今夜は飲みに
行くだろ? 朝までだって付き合うぜ」

「……冬馬、イラナイ、と言いたいとこ
だけど……行く。行くよ、今夜は。」

「よっしゃ!」


「え…あの、と、冬馬さん?
な、夏輝さんも…」

「あー咲ちゃん、今はそっと
してやって? 傷心だからさ。」

「へ…?」

「馬鹿冬馬っ、…咲ちゃんは何も
気にしないで。…ってか、ごめん。
春が、何かした?」


何故かポカリと冬馬さんを叩いて、
夏輝さんが心配気に私を覗き込む。

その近い距離と、言われた言葉に…
さっきの神堂さんとのキスを思い出して
湧いたヤカンみたいなった私。


「「「「「 !!! 」」」」」


何故か私を見る皆さんの目が丸くなり、
唯一切れ長の目を保ってた神堂さんが
スッと私の腰を引き寄せ、夏輝さんから
距離を取らせた。


「咲…っ! 帰るぞ!」


怒鳴るように言う山田さん。
ビクッと体が勝手に飛び跳ねるも、
頭を過ぎったのは今日のスケジュール。


「えっ、でも今からレッスンが…」


「えっ、そっち?! 」
「真面目にも程があんだろ。」
「…咲ちゃんらしいっちゃ
らしいけど……あ…春、大丈夫か…?」

「……問題無い。彼女のレッスンは俺の
『職務』だ。契約事項だから守らせて
貰う。…おいで、咲。」

「は…はいっ」

「咲!」

「へっ?! え、や、山田さん?! 」

「今夜のレッスンは契約不履行で
違約金を請求してくれて構いません!
咲、今夜はこの後もう休みだ!
帰るぞ!」

「えっ」


グイッ

…グッ


怒涛のように命令されて腕を引かれた
腕とは反対の腕をしっかりと掴まれる。


――え…?


「大岡裁きかよ。」

「どちらが本当のお母さん?ってか?」

「あ…っ、痛…ッ」


パッと放される両手。
捻ったりした訳じゃないけど、強く
掴まれた手首がジンジンとしている。
思わず摩れば、そんな私の様子を見てた
らしい澤田さんが触診するように私の
腕を軽く掴んではひっくり返す。


「あの…?」

「大丈夫、傷めては居ないわ。
…痛みはある?」


もう癖になってしまったのか、まだ
女性的な言葉を使いながら、澤田さんが
山田さんと神堂さんを見遣る。


「いい加減になさらなければ私は私の
任務に忠実に彼女を守り、あなた方を
退けますが?」

「「 !!! 」」

「こりゃ今回は新マネさんの方が
完全に上手だな。」

「だな。二人ともしっかりホンモノの
『お母さん』(愛)だったのになー。」

「って、感心してる場合じゃないだろ!
――兎も角、皆さん落ち着いて。
山田さんもこんな状態で咲ちゃん
引き摺って帰っても互いにギスギスする
だけでしょう? 春と二人きりでの
レッスンが不安なら今回はスタジオで
俺らも同席しますから。」

「メンバー同士で見張りも何も…っ」

「俺らが信用出来ないなんて言われちゃ
コラボ自体続けらんなくなんだろ。
山田さんも一度気持ちを落ち着かせる為
にも一旦廊下に出て、その窓から様子を
見守っちゃどうです? ほら、レッスン
開始当時みたく。」

「む…」

「それなら疚しい事なんて起こり得ない
でしょ? まーチューくらいしちゃう
かもだけど!」

「「冬馬っ!」」
「冬馬さん!!」

「って、えーー?
まさかもうされちゃった?」


もうっ、もうっ、もうっ!
一気に血が上って、その先の耳がもう
千切れちゃいそう…っ!

そんな私を見て皆さんがどう思ったのか

一瞬、シーーーンと静まり返り、
夏輝さんは視線を逸らし、コホンと
咳払い。冬馬さんと秋羅さんは目を
見合わせてニヤニヤ。澤田さんは小さく
溜息を吐き。山田さんはメガネの真ん中
指でグイッと押し上げた。

私の見上げた先には神堂さん。
満足気に、今日はもう何度目かも
分かんない優し気な瞳が私を映し…

「おいで」

と手を取られたのだった。


やっぱり今夜渡るのは恋の川。
キラキラと瞬く星の川と同じように
眩く輝く恋の架け橋であなたの元へと
誘(いざな)われる。


キラキラキラ

初めての恋は全てが手探りで
そんな一寸先さえ見えないのに
あなたの手が私を導くから、

何一つとして迷いは無い。

あるのはほんの少しの不安
それからキュンと来るトキメキと
…大きな期待。


今夜初めて渡る恋の川
天の川に阻まれた恋人たちも渡り合い
二人、手に手を取れただろうか。


キラキラキラ

キラキラキラ


ほら、こんなにも美しい天の川

今夜ばかりは阻むこと無く煌めいて
私たちを祝福して?










「――なんだ、此処に居たのか。」

「あ、お帰りなさい。」

「…どうした?」

「ふふ、…天の川を見ていたの。
一昨年の、七夕に春と…って思い出して
つい懐かしくなっちゃって…。」

「……俺は何度でも君の手を取り
この恋の川を渡るだろう。」

「…え…?」

「君との恋は永遠だから。」

「…っ、もう…春ったら…」

「君は違うの?」

「……違わないよ。春と渡る恋の川は
何時だってキラキラしてて…何時だって
ドキドキして、キュンとしてる。」

「……俺もだ。

今夜も、渡る?
恋の川を2人で泳ぎ、溺れ合い…
深みまで。」










Happy Star Festival
with the Milky Way 2016☆










end.

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