鬼灯長編

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「閻魔大王ッ!!」
「阿鼻地獄で川が氾濫していますっ」
「天国から要請書が…」
「黒縄地獄は財政破綻しそうですっ」

――ここは地獄、閻魔庁。
今日も今日とて大忙し。
亡者の増加に伴って様々な問題が発生し、地獄の責任者である閻魔大王は大変な目にあっていた。

「あーー、えーっとね、阿鼻は政令指定地獄でしょ、そっちで何とかして、天国のことは知らないよー、あの2人にでも相談してっ」
「アレ……そういえば鬼灯様と緋岸様は…?」
「2人とも視察に行ってるよ。この忙しさでさァ彼だけじゃなくて彼女すらあっちこっち引っぱりだこだよ」


―等活地獄―
『ぅひっくしょい!…あ゛ー…』
「大丈夫ですか?緋岸様ー」
『大丈夫大丈夫。きっと閻魔大王(あのアホ)か鬼灯様(あのドS)が何か言ってるんでしょ、多分。
…で、えっと…、血の池の枯渇問題だったよね。
あの水位ならまだ量を増やさなくてもいいから取り敢えず現状維持に努めて、って伝えて。あとは…、あの走ってくる獄卒君の書類を見て――』
「緋岸様ーっ!…あの、」
『いいよ、用件分かってるから。地獄改定案のサインでしょ?…はい、出来たよ、持ってって』
「え、あ、はい、ありがとうございます。し、失礼します」
「…ねぇ、緋岸様ー。さっきの書類、どんな地獄だったんですかー?」
『んーとね、「果樹園を焼いた者をサトウキビでめっちゃ叩く」って地獄。どこにあるか詳しくは分からないけど』
「そんな地獄が!?」
『…うん』
イザナミ様も大概だよなあ、と茄子君に気づかれないよう独りごちたその時。

「だからよォ!!さっきから何回も言ってるじゃねえか!!!」

どうやら新しく揉め事が発生したらしい。
なんでこのクッソ忙しい時に限って。
『茄子君、行ってみるよ』
「は、はいっ」
声の出元は、すぐそばだった。
1人の獄卒に変な男が絡んでいる。
…桃太郎じゃん。鬼退治だと勇んでわざわざ地獄にやってきたのか。
ご苦労様だな、全く面倒だ。
「ここで一番強い奴連れて来いっつってんの!」
「困りますよぉ〜。そういうことはまず受付を通して頂いて…」
「っかーッ!!そういうことしか言えねーのかよっ、このマニュアル獄卒!」
『まあまあ、ちょっと落ち着きなよ。私で良かったら話聞くし』
「あっ、緋岸様!危ないですよー!」
「おっ!お前上官だなっ!?
俺と勝負しろっ!!!」
『嫌。』
「すみません緋岸様、こいつ、微妙にしつこいんですよ、微妙に」
「微妙微妙言うなッ!!
……お前、俺と勝負しな。それとも怖いか?」
『…あの、私より強い人がいるんで、戦うならその人とやってください。今呼びますんで』
そう言って懐から携帯を出し、履歴から『鬼灯様』へと電話をかける。
ワンコールで出た。
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