鬼灯長編

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「簡法を熟知していると上司に大人気ですよ」
「え、下卑たやり方だなぁ」
だからどこでそういう言葉覚えてくるの。
『…ちなみに漢字はこう書くよ』
そばにあった手頃な紙に「簡法」と書いてシロに見せる。
「緋岸様の字、綺麗だね!」
『ありがとう』
「そう言えば何回か賞を取ってましたね」
「え!本当!?緋岸様凄い!!」
キラキラした眼差しでシロが私を見てくるけど正直くすぐったい。
『いやそんなこと、茄子君の方が凄いし…あ、こいつを斬って煮てくれる?』
隅っこにスタンバってた亡者の首根っこを掴んで差し出す。
亡者に襲いかかるシロの姿は完全に地獄の犬そのもの。さっきの可愛さはどこへやら。
「コイツの罪は?」
「盗聴と懸想」
『いわゆる最低の変態』
いつになってもこういう連中は存在する。
被害に遭う女性は不幸だね。
亡者の投入された鍋をかき混ぜる鬼灯様。
棒が亡者に当たってゴッゴッと音を立ててる。
うわ、楽しそう。
私は机の上のレシピを見て、鬼灯様の心を視ながら地獄虫を何種類か鍋に入れていく。
「ーあ、そうです馬頭の蹄…」
その言葉に、棚にあった刺のついた瓶を渡す。
「メズ?」
『地獄の門番の1人だよ。鬼灯様はその蹄をたまに削らせてもらうんだって』
「ストックがありません、取りに行かないと…。申し訳ありませんが2人ともついて来て頂けますか?」
『分かりました』
「わーい!お出掛けお出掛け!」

「ここが、天国・地獄・現世全ての境の門です」
『亡者はここを通ってから、最初の裁判を受けるために秦広庁へと向かうの』
「へえー」
天国側から来た二人組の人影が誰かはすぐに分かった。
「「あ」」
私は何も見てない。見てないんだ!
「緋岸ちゃ「ソイヤッ!」何の挨拶もなくそれかコノヤロウ!!」
問答無用で白澤さんの顔面に拳骨をお見舞いした鬼灯様。何て頼もしい。
「…いや、どうせ貴方と会ったら最後こうなるんですから。先に一発かましとこうと思って……」
確かにそうなんだけどね。
「80年代のヤンキーかお前は!」
『…何でわざわざ絡むんだろう……』
そんなんだから、傍から見れば仲が良く見られるのに。
「全く…、せっかく緋岸ちゃんに会えたってのに胸糞が悪いよ。さっさと用済ませて地獄名物の花街にでも行こう」
「そんな所があるんスか?」
「あるよ。そりゃーもうぱっつんぱっつんのおねーちゃんがいっぱいの、天国みたいな地獄が」
『衆合地獄ですね』
「貴方、女性なら手当たり次第ですか」
鬼灯様が呆れた様に言う。
「人聞きが悪いな、ストライクゾーンが広大だと言ってよ」
あ、否定しないんだな。
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