鬼灯長編

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毎年この時期に行われる「獄卒大運動会」。
今年で100回目ということで、鬼灯様が大会委員長として色々と企画したらしい。
うん、嫌な予感しかないね。

閻魔大王の挨拶でいよいよ運動会が始まる。
テントの中で、メガホン片手にアナウンスをする鬼灯様は楽しそうだ。
傍から見れば普段と少しも変わらないだろうけど私には分かる。
しまったな、私が大会委員長やればよかった。
今更後悔しても後の祭り。
なんとか無事に終われるようとりあえず天に祈っといた。
効くかは分からん。
そもそも天って具体的にどこだろう。
まあいいや。
最悪、いざとなったら止めれるように私もテントにいるとしよう。
「第一種目、借り物競争」
あ、唐瓜君と茄子君だ。
「いったれ唐瓜君に茄子君!」
そう叫ぶと、茄子君は手を振り返して唐瓜君はお辞儀してくれた。
「ヨーイ…」
ちょっと待て何でスタート担当がバズーカ持ってんの?
「ドン!!」
そして同時に発射されたバズーカ砲。
「さぁ始まりました、注目の第一種目!」
『しょっぱなからキッツいよ鬼灯様!』
「生温いライカンピストルはやめてバズーカにしました。迫力あるでしょう」
『迫力ありすぎて腰抜けた人いるんですけど!』
むしろバズーカ撃った獄卒がピンピンしてるのが地味に凄い。あれは有望株だな。
唐瓜君と茄子君は無事にスタートを切れたらしく、それぞれ1位2位で紙を取ることができた。
「よーし、一番のりだ。借り物のお題は……」
唐瓜君の動きが止まる。
…うわあ、「好きな異性」を引き当てたか。
なんていう運の悪さ。
その後に紙を取った他の獄卒も口々に「ええ!?何コレ!」「ヤダーー!!」と叫んでいる。
どのお題も精神的にくるものばかり。
「さあはりきってどうぞ」
「はりきれませんっ!!」
そう叫んだ唐瓜君に「頑張ってェ!」と声援を送るのは衆合地獄のお香さん。
分かりやすい反応するな、唐瓜君。
私じゃなくても察しがつくぞ。
「言っちゃいなさいよ唐瓜さん。そして玉砕すればいい」
「ヒイイイイ鬼の中の鬼!!」
というか玉砕する前提か。可哀想に。
「若いうちのこういう刺激が脳の活性化に繋がるのです」
「脳は活性化されても心は崩壊寸前です!!!」
そうこうしてるうちに茄子君がちゃっかりゴールイン。
「はいっ」
茄子君が高々と上げた紙には「誰かのヅラ」と書かれていた。
もう片手でちゃんとヅラを持っている。
勇者だ…!勇者がいるぞ…!!
会場は茄子君への喝采で盛り上がる。
その一角で泣き崩れるハゲを見つけた。
取ったのはあいつのか。
なるほど、参加する側もつらいけど観戦する側もある意味でつらい訳だね。
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