鬼灯長編

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まだ第一種目が終わったばかりなんだよな、と思うとどっと疲れてきた。
未だにあの獄卒君が可哀想で仕方ない。
本当にごめん。
スキを見て謝りに行こうか。
…いや、鬼灯様の機嫌がどうなるか分からないし止めとこ。
「第二種目、もふもふ動物大集合!ワンワンパニック!」
目の前の光景と種目名が全くもって一致してない。
なんてこった。
それこそ、地獄に動物はたくさんいるけど毎年応援だけ。
種目に参加することはなかった。
シロたちのためにわざわざ種目を作ってあげたんだろうけど…多分自分が見たかったってのが8割かな。
「まずは純粋な闘犬です。血湧き肉躍る素晴らしい戦いを期待します」
赤コーナー側で登場したのは、シロが先輩と呼び慕っている地獄犬、夜叉一。
何と「向こう疵の狂犬」というシブい二ツ名を持っていた。
夜叉一先輩あなどりがたし。
そして観戦席から愛しの旦那様に声援を送る元お局様。
しかも既に妊娠済み。早いな。
生まれてくるお腹の子犬には、ぜひ地獄で働いてもらいたいものだ。
「ほほえましいですね、奥様のクッキーさんが来ているようです」
元お局様そんな可愛い名前だったのか。
「さて、そんな狂犬に対するは……
白コーナー、遠路はるばる出稼ぎに来た「タルタロスの熱き犬」ケルベロス!!」
サイズがデカい。
『何でこんな対戦カードにしたんですか…?』
「面白そうだったのでつい……」
『洒落にならなさそうだったら止めに入りますからね!?』
「むしろ止めようと考えてる緋岸ちゃんが洒落にならないよっ!」
けれど無事私の読みは外れ、夜叉一が棄権するという賢明な判断をした。
ああいう潔さは見習わないと。
「チッ…」
あ、やな予感。
「では予定を変更して……緋岸、ちょっと行ってきてあげてください」
会場がどよめいた。そりゃそうなるわな。
さっきこうなることが読めた私は、鬼灯様に借りた金棒を構えてケルベロスに対峙する。
近くで見ると尚更でかい。
あと生臭い。

ちなみに私は八大地獄では自分の武器を持っていない。
必要なときは鬼灯様から借りている。
幸いにも持ち主を選ぶあの金棒は、私も認めてくれたのだ。
ゆっくりと、深呼吸。




…こんだけカッコつけて負けるなんて有り得ない訳で。
…ええ、楽勝でした。
金棒で一発ガツンとかましてやりましたよ。
あぁ、スッキリした!
「緋岸ちゃんやっぱり強いね〜!」
『相手が油断していたので、やりやすかっただけです』
「流石ですね。余りにも呆気なく勝ってしまったので、正直つまらなかったです」
別に貴方だけを楽しませるためのものじゃないと思うんですが。
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