賢者の石
□生き残った男の子
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サマンサを取り巻く環境が変わったのは、英国中が喜びに湧いた、あの日の前の事だった。
「 サマンサ、いい子だからよく聞きなさい。君は今日から、ニホンという国に行くんだ。 」
父親であるアランは、まだ幼いサマンサが理解できるように、ゆっくりと言葉を紡いだ。
『…パパ、パパは行かないの?』
今にも泣き出しそうな サマンサを抱き締め、アランは笑顔を見せる。
「パパは、まだお仕事があるんだ。昨日来た人を覚えてるかな?セブルスと、する事が出来てしまってね。」
サマンサの頭を撫でた後、アランはゆっくりと立ち上がった。
その目には強い意思が見え、顔は固く強ばっていた。
「さて、 ヒナコ、後の事は宜しく頼んだよ。全てが片付いたら、僕も後を追うからね。」
母親のヒナコは頷くと、サマンサの右手を握りしめた。
「二人で、パパを待っていようね。」
笑顔でサマンサに話しかけた筈の母親は、何故か泣いている様に見えて仕方なかった。
◇◆◇◆◇
そして、それから約一年が過ぎた、ある夜中の事だった。
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