賢者の石

□鍵の番人
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奇妙な夢から覚めた後、コツコツと叩くその音に、やっとサマンサは気が付いた。

慌てて窓を開けてやると、小さな灰色の梟が入ってきて、部屋の中を飛び回った後に、ようやく手紙を離した。


────サマンサ、昨晩はよく眠れたかの。実は今日、ハグリットに引率を頼んでおったがまだ所用から帰っておらぬのじゃ。変わりに適任がおったので頼んでおる。昼頃迎えに来るじゃろう。

追伸、この梟はサマンサへのプレゼントじゃ。入学おめでとう!
アルバス・ダンブルドア────


手紙を読み終えて顔を上げると、ご褒美を待っている、小さな梟が見えた。

スーっと肩に降りてきて、左耳を軽く啄んだ。


『か、可愛い…!』


気に入ったサマンサは早速、お礼の手紙を書く事にした。


『うーん、名前は何にしようかなぁ………』


手紙を待つ小さな梟は、急かすようにサマンサの右手をつついてくる。

そのせわしない様子はまるで、リスのような小動物を彷彿とさせた。


『…………………決めた!チップ!』


日本で母が見せてくれた、アニメの双子リスの名前だ。

ちょこまかと動き回る姿に、ものすごくピッタリである。


『………よし!さぁチップ、初仕事を頼むわね。これをダンブルドアへ届けて欲しいの。』


チップは引ったくるように手紙をくわえると、これでもかと羽を広げて、開けた窓から飛び去った。

それを見送った後に、軽く朝食をとってから、でかける準備を始めた。


『それにしても、誰が来るんだろう』


鞄から着替えを出しながら、サマンサは真面目に考えた。


『まさか、スネイプさん…?』


口に出してはたと気が付いた。
そう言えば、スネイプはホグワーツの教師なのだ。


『スネイプ…先生…。よし、これで完璧ね!』


今までは父親の知人という認識でさん付けしていたが、さすがにこのままでは相手にも失礼だと呼び名を変える事にした。

と言っても"さん"から"先生"、あるいは"教授"に変わっただけであるが。


『間違えないようにしなくっちゃね。いつまでも根に持つようだし。』


空港でのやり取りを思い出して、サマンサは思わず吹き出した。

立派な大人に対して失礼ではあるが、サマンサにはその姿がなんとも可愛らしく映ってしまうのだ。


(悪い人じゃないのよね…照れ屋なのかな?)


あれこれと考えるサマンサの耳に、小さなノックが聞こえた。


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