賢者の石
□ノーバート
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あれから急いで城に戻ったサマンサは、スネイプにハリーが一部始終を見ていた事を報告した。
だが、スネイプは「そうか」と呟いたっきり、それ以上何か言うことはなかった。
あまりしつこく言ってもいけないし、何か考えがあるのだろうとサマンサは話題にするのを辞めたが、せめてクィレルとハリーを見張る事にした。
クィレルはますます青白く、やつれて見えたが、不審な動きをする様子は見られなかった。
「やぁサマンサ、勉強教えてくれないかな?」
ハリー達を見張る為に図書室へ来ていたサマンサの隣に、誰かが腰かけた。
『──だれかと思ったらザビニじゃない。図書室に来るなんて珍しいね』
「はは、僕もそう思うよ」
ザビニは白い歯を見せて笑う。
それは黒い肌にとても映えていて、プレイボーイと呼ばれるに足りる仕草だった。
「今日はパーキンソン達と一緒じゃないんだ?」
『うん、パンジー達は現実逃避するって中庭に行っちゃったんだ。ドラコは図書室飽きたって』
「そっか──じゃあ、暫くは二人っきりで居られるね」
ザビニは笑顔を崩さないまま、流れるような動作でサマンサの右手を握りしめる。
『え、えっと、勉強教えてほしいんだよね?!』
サマンサは慌てて手を振りほどくと、積まれた本から教科書を探そうと手を伸ばした。
だが、ザビニはこれ幸いと伸ばした手を思いっきり引き寄せてきた。
『うわっ!』
バランスを崩したサマンサは、そのままザビニの胸へと傾いていく──
「───貴様ら、何をしている」
『きょえーー!!』
倒れ込む直前にスネイプからローブを引っ張られたサマンサは、首が締まるのを感じて変な雄叫びを上げた。
「ス、スネイプ先生…!」
「これはこれは…我輩はお邪魔でしたかな──Mr. ブレーズ」
スネイプは放り投げるようにサマンサから手を放すと、詰め寄るようにザビニへと近付いた。
「い、いえ!僕はただ、勉強を教えてもらおうかと………」
「ほう、ならば今回の試験はさぞや良い点がとれるのでしょうな」
皮肉を込めて言ったスネイプは、眉間の皺を深く刻んだ。
「も、もちろんです………!じゃ、じゃあ僕はこれで!!」
ザビニは冷や汗を拭いながら早口に言うと、脱兎の如く図書室から飛び出して行った。
「──スリザリン一点減点」
吐き捨てるように呟くと、スネイプはサマンサを見ないままその場から立ち去って行く。
『げほっ、うぇ…なんだったのよ一体……!』
ザビニの行動も、スネイプの行動も不審に思いながら、サマンサは涙目で深呼吸するのだった。
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