賢者の石

□組分け帽子
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「ハッフルパフ!」

「ハッフルパフ!」

「レイブンクロー!」

「グリフィンドール!」


どんどん組分けが進んでいくが、肝心のハリー・ポッターは今だ呼ばれず、わからないまま時が過ぎた。


「ドラコ・マルフォイ!」

「スリザリン!」


更にサマンサ自身も呼ばれなくて、段々と退屈してきた頃だった。

何気なく教員席を見てみると、スネイプがこちらを睨んでいる。

思わず小さく手を振るが、勿論振り返しはしなかった。


「ポッター!ハリー・ポッター!」


そう叫んだ帽子の声に、サマンサは慌てて目を向けた。

そこにはボサボサした黒髪の、なんともひ弱そうな男の子が立っていた。

──失礼な言い方ではあるが、全く"英雄"には見えない。

しかし眼鏡の奥にある明るい緑色の目は、とても優しそうに思えた。


「…………グリフィンドール!!」


暫く時間がかかったが、ハリーは寮に組分けされた。

ハリーは直ぐに帽子を脱ぐと、小走りにテーブルへと向かう。


「サマンサ・パケット!」


そのあとに呼ばれたサマンサは、前に出て勢いよく帽子を被った。


「…………うーん、君はパケット家の子だね。ならば………スリザリン!!」



サマンサは帽子を脱いで置き、ドラコ達の居るテーブルへと移動をした。


「サマンサ、こっちだ!スリザリンで良かったな」


ドラコが隣を空けてくれたので自然とそこに座ったが、隣がゴイルだった為にもの凄く窮屈だった。


「ホグワーツ新入生、おめでとう!そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!」


ダンブルドアのへんてこな掛け声のあと、テーブルの上は色々な食べ物や飲み物で溢れかえった。

皆が黙々と食べる中、何故かサマンサはスネイプの反応が知りたくてそわそわしていた。


(私がスリザリンで、少しは喜んだりしたかな………?)


そんな事は有り得ないと思いながらも、目は勝手にスネイプを探してしまう。

カボチャジュースを片手にキョロキョロしていると、ドラコが不審者を見るような目つきで睨んできた。


「おい、何をキョロキョロしているんだみっともない!スネイプ先生に怒られるぞ!」

『え?スネイプ先生何処??』

「ほら、あそこに座ってるのがスネイプ先生。僕らの寮監なんだ。…さっきからお前を睨んでるぞ」


ドラコが指す方を見ると、確かに眉間に深い皺を作ったスネイプが 、サマンサを睨み付けていた。


(……………ん?何か言ってる?)


スネイプが口をもごもごしだしたので注意深く見ると、何やら文章のようだった。


『…あ…とで……ち…か……!』



───後で地下牢へ───



きっと、たっぷりお説教されるに違いない。

項垂れるサマンサとは真逆に、ドラコ達はたらふくご馳走を食べて、満足した顔をしていた。


『…………ねぇ、ドラコ。スネイプ先生の隣に居る人って誰?』


少し眠たそうにしてるドラコの肩を、気持ち激しく揺すってみた。


「ん?ああ、聞いてなかったのか?クィレル先生だよ。防衛術の先生。さっき紹介してただろ?」


サマンサがじっと紫色したターバンを見ていると、急にこっちへ振り返った。


「──あっ!!」


つい、驚いて声が出た。


振り向いたクィレルのその顔は、夢で見た"踊るターバン男"と同じであった。



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