賢者の石

□組分け帽子
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◇◆◇◆◇


「サマンサ、何処に行くんだ?」


歓迎会が終わり寮へ帰る途中、道を外れるサマンサにドラコが話しかけてきた。


『えっと、スネイプ先生にちょっと呼ばれちゃって』

「……ああ、ものすごく睨まれてたもんな」


ドラコは少し考えた後、合点したのか頷いた。


「僕が地下までついて行ってやろうか?」

『ううん、大丈夫。すぐそこだし。ありがとう、ドラコ』


サマンサはドラコに手を振って、地下へ続く階段を下りた。

そこは松明の灯りが頼りないくらい、真っ暗闇に包まれていた。


『───教授。 パケットです』


最近では合図になっている三回ノックをしてみたら、扉越しに「入れ」と声がした。

言われた通り中に入ると、地下室らしいヒンヤリとした空気が体を包み込んだ。


「───さて、どうでしたかな?」


紅茶の入ったカップを差し出しながら、スネイプは唐突に切り出してきた。


(えーと、多分、ハリー・ポッターの事…だよね?)


脳内でそう補足をしたサマンサは、広間での事を思い浮かべた。


『そ、そうですね………正直、言われている程特別な印象はうけませんでした。どちらかと言えば、ごく平凡な……人の良さそうな男の子、といった感じでしょうか』


両手でカップを受け取りながら、サマンサは感じた事を正直に言った。

今日淹れてくれたこの紅茶も、香りがよくてとても美味しい。


「フン、随分と上からのご意見ですな、Ms,パケット。………しかし、的を射ている」


言いながら研究室の方へと歩くスネイプは、杖で暖炉の火を消し去った。


『あの、さすがに寒いんですが………』


紅茶とわずかな火で暖をとっていたサマンサは、さすがに堪らず抗議をした。


「…………こちらに来ればよかろう」


寒さでどうにかなりそうだったサマンサは、小走りでスネイプを追いかけた。


『ふうー、こっちは暖かいですねぇ』


研究室は狭いのもあって、暖炉の小さな火でも充分な暖がとれた。

ただひとつだけ難点なのは、ソファーが小さい事である。

このソファーに二人で座ると、肩が触れそうになってしまうのだ。


(どうも緊張するんだよなぁ………)


他に座る所もないので自然とスネイプの隣に腰かけたのだが、変に緊張してしまって、うまく言葉が出てこない。


『えーっと、あ、あの、私、スリザリンになりました!』

「知っている。目の前で見ておったからな」

『あ…そ、そうですよね…』


会話のチョイスに失敗したと気が付いて、サマンサは大きく項垂れた。

もう後は、紅茶を飲み干すことしか出来ない。

そう思い何気なくカップの縁を眺めていると、サマンサはある事を思い出した。


『あ、私、教授に話さなきゃいけない事があったんです』


そう言うとスネイプは頷いて、サマンサに話しの続きを促した。


『…………歓迎会の時、教授と話してたクィレル先生なんですが、実は休暇中にあの人を夢の中で見かけました』

「それは………予知か?」

『わかりません。まだはっきりとは見えなくて……もっと事柄が近付いてきたら、詳しく見ると思うんですが………』


まさか奇妙な躍りをしていたとも言えず、サマンサは当たり障りない答えをして濁した。


「成る程、では詳しく見た時は直ぐ我輩へ報告するように」


スネイプの意外な返答に、サマンサは目をパチクリさせた。


「その顔は一体何のつもりですかな?我輩を馬鹿にするつもりなら即刻───」

『わーー!!違います、違いますってば!』


今にも杖を抜きそうなスネイプを、必死になって押さえ付けた。

このままでは間違いなく、何か呪いをかけられそうだ。


『だ、だって、最初に予知夢の説明した時の教授、ものすごく馬鹿にしたでしょう?だから、信じてくれた事に思わず驚いたんですよ!』


サマンサがそう説明すると、今度はスネイプが驚いたようだった。


「……………………あれは、ダンブルドアに対するものだったのだ」

『───へっ!?』


思わぬスネイプの告白に、サマンサは両目を丸くした。

そしてスネイプはと言うと、眉間に手を当て項垂れていた。


「………ダンブルドアは、確かに我輩へ空港に行くよう指示を出した。だが、着いてみれば散々違いを指摘され………その、すまなかった」


つまり、ダンブルドアの勘違いで振り回され、更に嫌味を言われ、せめてもの当て付けであのような発言になったのだろうと、勝手にサマンサは結論付けた。


『───いえ、教授も大変なんですね………』


サマンサは心の奥底から、スネイプに同情を覚えた。



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