賢者の石

□ノーバート
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不機嫌なスネイプとお茶をした後、寮に戻ったサマンサはドラコが居ない事に気が付いた。


『ねぇドラコは?』

「………居ないわね。さっきまで居たんだけれど」


サマンサとパンジーが寮生に聞いて回ると、どうやらグラップとゴイルを引き連れて何処かに行ってしまったらしかった。


『また悪さしてなきゃいいんだけど……』

「直ぐ戻るわよ。私は先に部屋へ戻るから」

『わかった。私も宿題が終わったら寝るわ』


片手を上げたパンジーに、サマンサも片手を上げて答える。


「程々にしなさいよ。期限はまだあるんだからね」


サマンサが小さく頷いてみせると、やっとパンジーは柱の影に消えて行った。


『さて、心配性の為にも早く終わらせなきゃ!』


サマンサは羽根ペンを深く握りしめ、大量の羊皮紙を手繰り寄せた。


◇◆◇◆◇

あれからどのくらい経ったのだろうか。

サマンサは今、夢の中にいた。


──ハリー………ハーマイオニー……透明マント、四角い箱にマクゴナガル先生………それから…………………ドラゴン?───


◇◆◇◆◇


「────……きろ………起きろ──……サマンサッッ!!」

『───う"わあっ!!』


無理矢理現実へと引き戻されたサマンサは、叫び声をあげて飛び起きた。


『ど、ドラコ?!』


突然現れた友人の顔を見て、やっとサマンサの脳内が現実に追い付いてくる。


「ごめん、そんなに驚くとは思わなくて………それより、凄いことが今からあるんだ!サマンサも来てくれ!」


ドラコは早口で捲し上げると、驚いたままのサマンサを引きずるようにして寮を飛び出した。


『痛い!ドラコ痛いよ!!』


よほど興奮しているのか返事は無く、ドラコは暗い廊下を突き進んで行く。


『ねぇ、待ってよ!何処に行くの?!フィルチに見つかったら大変───』

「しっ!!静かに!!」


突然、ドラコはサマンサの口を塞いで物陰に隠れた。

辺りは真っ暗やみで、たまにゴーストが横切った所だけが白く光る。


『……ここは何処なの?』

「静かにしろよ!──もうすぐ、ポッター達がやって来るんだ」


ドラコは再びサマンサの口を塞ぐと、廊下の先を睨み付けるように見つめた。

そこは暗闇が何処までも続いており、誰かが現れるような気配は全く無い。

それでも待つ事30分強。
段々頭が覚醒してきたサマンサはこの光景にデジャブを感じた。


(──暗闇…………ハリー………ドラゴン……………)



思い出した瞬間サマンサは、頭を鈍器で殴られた様な衝撃を受けた。
──このままでは大変だ。


『………戻るわよドラコ!!ここにいちゃいけない!』

「えっ?」


急に強い口調で喋りだしたサマンサに、ドラコは目を丸くした。
先程までの威勢は何処へやら、視線を泳がせて狼狽えている。


『ほらっ!早くしないとマクゴナガルが来ちゃう!!』

「ま、待てよ!一体どうしたんだ?!」

『どうもこうも無いわよ!早く戻らなきゃ!』


狭い物陰で押し問答をしていた二人は、いつの間にか廊下のど真ん中で言い争いをしていた。


「だから、なんでマクゴナガルが来るってわかるんだよ!」

『そ、それは──』

「どうせ、ポッター達の味方したいんだろ?!サマンサはいつもそうだ!お前はスリザリンなんだぞ!!」


ドラコが鼻息荒く叫んだ瞬間、暗闇だった廊下が、燃えるような朱色に変化した。


「パケットの言うとおりですマルフォイ。貴方は直ぐに寮へ戻るのが懸命でしたよ」


──二人はゴクリと唾を飲み、声が聞こえた方に振り返った。

するとそこには予想していた通り、般若の顔をしたマクゴナガルが、二人を見下ろすように立っていた。


「──わかっていますね、二人とも」


静寂に包まれた廊下の角で、マクゴナガルが声を張り上げた。


「せ、先生、誤解です!ハリー・ポッターが来るんです……ドラゴンを連れてるんです!!」

「罰則です!!」


弱弱しく反論したドラコに、マクゴナガルは更に声を張り上げた。


「なんというくだらないことを!どうしてそんな嘘をつくんですか!………いらっしゃい。貴方達の事でスネイプ先生にお目にかからねば!!」


マクゴナガルの言ったその言葉に、二人はこれから起こるだろう地獄絵図を思い浮かべて、項垂れる事しか出来なかった。


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