めいん

□それでも君と  上
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『あ、いけない!薬草がなくなっちゃった!どうしよう…あともう少しで完成だったのに…』




この女の子の名前は名無しさん。旧市街の一角で薬屋を営んでいる。昔は父親がやっていたのだが、その父親が亡くなってからは名無しさんがあとを継ぎ、一人でお店を切り盛りしていた





『この薬草はウルスラ間道に出ないと手に入らないのよね…しょうがない、遊撃士協会に行くしかないか』



名無しさんはいつも薬草をとりに行く時は遊撃士に護衛をお願いしていた。ほんとは近いところなどは1人で行ってもいいのだが、街道には魔獣が出て危険なので安全のために遊撃士を頼るしかなかった




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『こんにちはミシェルさん』




「あら名無しさんちゃんいらっしゃい。相変わらず可愛いわねー!今日はいつもの?」




『あはは…ありがとうございます。あの、薬草が切れてしまったので取りに行きたくて…』




いつも遊撃士に頼んでいるため受付のミシェルとはもう随分と長い付き合いになる




「そう、いつも大変ね。でも1人で頑張りすぎちゃダメよ?お父さんが亡くなってどれくらいになるかしら?」




『父が亡くなって5年ですね。それでも、私の薬を頼ってくれる方たちがいるので頑張らないとなんです』




「確かに旧市街の人たちは病院にも行けない人もいるから…名無しさんちゃんの薬があってほんと助かってると思うわ」




『…そうだといいんですけどね。ところで今日はみなさんお忙しいですか?』




「あぁ、話がそれちゃってごめんね。今日なんだけど、あいにくみんな出払っちゃてるのよね。アリオスに今日お休みあげちゃったし…薬草取りに行くのって明日じゃダメかしら?一応夜にはリンとエオリアが戻ってくる予定なのよね」




『そうですか…わかりました。じゃあまた明日来ますね』




「ほんと、ごめんね」



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遊撃士はみんな出払っているということで名無しさんは一旦自分の店に戻ってきていた




『さて、どうしよう…この薬のおじいちゃん、最近体調良くないって言ってたしなるべく早く渡してあげたいのよね………まだ明るいし少しくらいなら平気……よね?』




そう呟くと名無しさんは薬草を入れるためのカゴを持って家を出た








『うぅー、やっぱ1人だと心細いなぁ…いつもはリンさんかエオリアさんが一緒だからたくさんお話してくれるし…』




そう言いながらウルスラ間道を進む。目的の薬草はウルスラ間道から星見の塔の方へ少し入ったところにたくさん生えているはずだった…が、




『…あれ?ない…いつもはこの辺りに生えているのに…もう少し奥へ行ったらあるかな?』




名無しさんは森の奥へと足を進める




「…ん?こんなところに女?しかも1人か…?」




今日は珍しく仕事が休みだったアリオス。久々にシズクに会いに病院へ行き、その帰り道で1人間道を歩く名無しさんを見つける




「魔獣も出るというのに護衛も付けずに女が1人で歩くなど……仕方ない。少し様子を見るか」




そう言ってアリオスは名無しさんが入って行った塔へ続く道へ足を向けた





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