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□闇に降る雨
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闇に降る雨



気付いたら真っ暗な闇の中にいた。

ぽつぽつと、少し生ぬるい雨が顔に降ってくる。だけど何も見えない。またすぐに意識が遠退いていった。



気付いたら真っ暗な闇の中にいた。何も見えない。一体ここは何処なんだろうか。身体を動かそうとするがぴくりとも動かない。耳元では先ほどからぴっぴっぴっ、と何かが鳴っている。

ガラガラと、荒ただしくドアを引く音が聞こえた。聞き慣れた声が頭の中にきーんと響く。会社の同僚だ。だけど姿は確認出来ない。

「はあ、はあ、ここか!!」
「あれ?どうしたの?」

この声は、あいつがここにいるのか?身体が動かない。声も出ない。頼れるのは聴覚だけだ。

「大丈夫だったのか?」
「うん、まあ死んではいないらしいよ。」
「らしいって、なんだよ。」
「なんか打ち所が悪かったらしくてね、植物状態になっちゃったんだって。」
「え!?」
「もう二度と目覚めるないかもしれないって、先生が言ってた。」

おい一体何の話しだ。なんで見えない?なんで動かない?

彼女の言葉を理解することが出来ずに暫く困惑していたが、突然全てがフラッシュバックする。闇の中を映像が物凄い速さで流れていった。

そうだ。仕事先からバイクで帰宅している途中に、事故にあったんだ。トラックが突然突っ込んできてそれから、それから。ということはここは病院で、ちょっとまて、植物状態って、二度と目覚めないかもって、うそだろ、うそだと言ってくれ!だって、意識はあるんだ。何も見えねえけど、こんなにはっきりしてるんだ!それともこれは夢なのか。だったら早く覚めてくれ。

「そんなことより、会社大丈夫なの?仕事中だったんじゃないの?」
「植物って、・・それ、マジなのか。」
「え?うん、本当らしいよ。バカだよね。」
「二度と目覚めないかもって、」
「こいつ私に黙って女の子と会ってたらしいから罰が当たったんじゃないの?笑えるよね。」

オイオイなんだよそれおまえ。もうちょっと悲しんだりできないのかよ!それにおまえのいう黙って会っていた女って、それはあれだ、間違いなく姉貴のことだ。会ってたのはもうすぐおまえの生まれた日だったわけで、まあ色々アドバイスをだな・・・。

まあ、それがおまえだよな。いつもツンツンしてて文句ばっか言って。告白は一応承諾してくれたけど、付き合ってから一度だってデレなんて見たことない気がする。あれ?つーか俺なんでおまえのこと好きになったんだっけ?なんてまた考えているといきなり同僚が怒鳴り声を上げた。

「なんだよ、それ。・・・なんで笑ってんだよ!悲しくないのかよ!」
「え、なに怒ってんの?」
「さっきから罰だとかバカだとか、全然笑えねーよ!」

やめろ。いいんだよ。こいつはこういうやつなんだ。なんだよこれは、この重い空気かなりいやだ。ああ早く覚めねーかな。

「もう二度と、・・起きねーかもしれねーんだ「うっるせえ馬鹿!起きるに決まってんだろ!!」」

今度はあいつが怒鳴った。俺はびっくりした。

「起きるもん。」
「な、」
「絶対起きるの、だから悲しくなんて全然ないもん。」

そう言ったあいつは酷く涙声だった。俺の手に、ぽつぽつと液体が落ちる。雨の正体がわかった。

「起きる、起きる、起きる、起きる。」
「・・・・・・うん、そうだな、起きるよな、ごめん。」
「今度一緒に海に行こうって言ったし、駅前のパフェだってまだ一緒に食べてない。まだまだやりたいことだっていっぱいいっぱいあるんだもん、だから絶対起きるの。」
「うん。」

おい、神様、もういいだろ

「私、こいつを信じてるの。」

今すぐ抱き締めたいんだ。

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