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□浅葱の巫女
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その日はいつものように町に繰り出した。

けどいつもと違ったのはある女の子とともに浪士から逃げたこと。

彼女の名前は雪村千鶴。

父を捜して江戸から京まで来たようで、すごくかわいらしい子。

その子の太刀を狙って浪士が絡んできたのだが、切るわけにもいかず、逃げてきた。


『千鶴ちゃん、こっち!』

「う、うん」


手を引いて物陰に隠れる。

浪士が近づいてきて足音が聞こえる。

私は持っていた手拭いで彼女の目をふさいだ。


「小夜ちゃん!?」

『大丈夫、このまま大人しくいて。私がなんとかするからいいって言うまでそれ、取っちゃだめよ。』


少し戸惑っているようだったけど、彼女は頷いた。

それを見て満足して、再び道のほうに視線を戻した。

来る、そう思ったのだが、悲鳴によってそれは実現しなかった。


「な、なに!」

『しっ』


千鶴ちゃんの背中に手を置いて宥めるようにすると落ち着いたみたいで、小声で「何があったの」と聞いてきた。

まさか新撰組の羽織を着た隊士が血に狂っているなんて言えるはずもなくて、私は「大丈夫」としかいえなかった。

浪士を切った後、そのバケモノは私を見つけた。

切られる前に私は弓を引いて矢を放った、心臓めがけて。

矢は貫通して、じゅうっと焼けるような嫌な音がしながらその隊士は倒れた。


(破魔の矢が効くってことは、人間じゃないの!?)


そんなことを一瞬考えたが、まだ残っているため、さっさと矢を放った。


事が終わったところで、隣の小道から人が出てきた。


「あ〜ぁ、僕一人で始末するつもりだったのに」

『だったらもっと早く出てきてください。ずっとそこで見ていたんですよね?』


ちらっと小道を見ればその人は笑った。

さっきのモノと同じ、新選組の羽織…

理性はありそうだけど油断はできない。


『!!』


はっと千鶴ちゃんを思い出した。

急いで駆けよれば、彼女は大人しくそこにいた。

けど、やっぱり怖かったのか、少し震えている。


『もう大丈夫だよ』


手拭いをほどけば、彼女は私を見て抱きついてきた。

その時、背後で気配がした。


「逃げるなよ、背を向ければ切る。」



…すでに背を向けているんですけど。
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