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□浅葱の巫女
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体に千鶴の体重がのしかかった。


『…気を失っちゃったのね』


刀を向けてきた人はそれを見て刀をしまった。

…切るつもりはないじゃない。


「おやおや、土方さんが脅かすから、気を失っちゃたじゃないですか。」


この人が土方歳三…あの鬼の副長って言われている人なんだ。

でも…目は優しい目をしているのね。


「副長、死体の処理はいかように。」

「羽織だけ脱がしておけ、あとは監察に処理させろ」


その人たちが話しているのを見て、私は立ち上がる。


「なに、逃げるつもり。」

『それならとっくに逃げていますよ、矢を回収するんです。』


本当なら今すぐにでも禊をしたいところなんだけどね。

このようすじゃあしばらくは貴船に戻れなさそうだし、自分で穢れを払うしかないのね…


「それで、どうするんです、この子たち」

「屯所に連れて行く。」

「あれ?始末しなくていいんですか?さっきのみられちゃったんですよ。」


おちゃらけて言っているように見えるけど、結構真剣みたい。

目が笑ってないもの。

こういう人は危険と、経験上知っている。


「そいつらの処分は帰ってから決める。」

『じゃあ千鶴連れて行くの手伝ってくださいよ。』

「君が連れて行ってよ。」

「…あなたたち男なんですから…」

「はいはい」


ひょいっと茶髪な人が千鶴を担ぎ上げた。

私はというと、無口な人に手首をつかまれている。

別に逃げたりしないのに。

まぁ、用心に越したことはない。

私をつかんでいる人、今まで数えきれないくらいの人を切ってきたんでしょうね。

けれど、それは忠誠の証、自分の道を貫き通しているんだ。


「どうかしたか?」


私の視線に気が付いて振り返ってきた。


『いえ…とても副長思いの人なんですね。』


そういうと、彼は目を見開いた。

…間違っていたかしら。

人を見る目だけはあると思うんだけどな…


屯所に着けば、私と千鶴は縛られてしまった。

翡翠の瞳をした人に縛られたため、手が痛い。
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