□Syrinx, I Love You
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【バレンタイン大作戦】


※ヒバツナ要素なし
ツナ+アラウディ&ジョット
ジョットじいちゃん超破天荒
綱吉が14歳のころ
2014年バレンタイン拍手(加筆修正)





 沢田綱吉、14歳。日本生まれで13歳まで日本に住んでいた。
とある事情で現在祖父(正確には曽祖父)とその友人のアラウディと一緒に旅をしている。
それはいい。旅はきついこともあるけれど、楽しい。
問題は今綱吉たちがいる場所である。

現地時間は2月10日 午後9時。

 綱吉の母国では、数日後に控えたあるイベントにむけて、乙女たちが盛り上がっていることだろう。
その日、綱吉は、そんな日本の乙女たちとは反対に、そしてまさしく文字通りの意味で地球の裏側、すなわちアマゾンの奥地にいた。


 そもそも、なぜ綱吉がそんなところにいるのか。
それは数日前の破天荒を絵に描いた様な彼女の祖父の一言が原因であった。

「アナコンダが見たい!」

 その時は三人で仲良く映画『アナコンダ』を観ていた。
何がどうして人食い蛇のパニック物の映画を見ていて、その実物を見たいと思うのか。
綱吉もアラウディも、ジョットが言いだしたら止まらない事を知っている。
だからもう、彼が「見たい」と言った時点で諦めていた。
怨むべくは、そんな事を言いだす元凶となった映画を観ていたこと。
まあそれだって、ジョットチョイスなのだが。

 そして今、三人はアマゾン川に浮かぶ船の上。目指すは上流、そしてアナコンダ。
というわけである。


 実は、今回は初めて三人で迎えるバレンタイン。綱吉は先月あたりからどうしようかこっそり頭を悩ませていた。
それというのも、綱吉はこのイベントに参加したことがなかった。
日本にいた頃もまだ、特に好きな男の子もいなかったし、父親だって家に不在がちだったから、バレンタインにチョコを誰かに贈ったことが無いのだ。

「適当だけど優しいおじいちゃんと、憧れのアラウディさんにチョコレートをあげる!」

ちょっとうきうきしていた。


 だというのに、綱吉が今いるのはアマゾンの奥地。秘境。
当然チョコなんて売っているわけが無い。
バレンタイン当日まであと四日。
 さっきまで彼女の祖父が、鼻息荒く、「絶対アナコンダ捕まえてアミーゴになる!」と叫んでいた。
今回のバレンタイン、熱帯雨林で虫や動植物と過ごす飛びきりスリリングなものになりそうである。
はぁ。ため息をついてしまうのも仕方ない。

「…まあ、来年でいいかな」

綱吉は、北半球とはちょっと違うお星様たちに向けて一人呟いた。



「…まあ、来年でいいかな」

 その綱吉の呟きを拾ったものがいた。

 何が来年なのだろう。
しばし考えて、「ああ」と納得する。

 数日後に迫った2月のイベント。
少女の育った日本では女性が相手にチョコなりなんなりをプレゼントして想いを伝える日だという。
なるほど、綱吉だって可愛らしい少女なのだ。
きっと思うところもあるだろうに。
それが、こんな地球の秘境で過ごすことになりそうだ。

 綱吉は普通の少女たちとは違う青春を送る事になる。
彼女の人生は、特殊で波乱に満ちている。
でも本当は、綱吉はそんなもの望んでいない。
平凡で平和な人生を愛する、優しい子どもなのだ。
 そして、その最大の原因が自分たちの作ったある組織だった。
人々を守るために作った組織が、今、一人の少女を苦しめている。
だから、彼女を鍛える時以外は存分に甘やかしてやろうと綱吉の保護者たちは決めていた。
それで彼女への贖罪を、などとは思ってもいないのだが、せめて、一緒にいる事ができる間は。
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