□彼はスーパースペシャルラッキーマン
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五月の爽やかな緑の風、ではない熱風と、地響きかと間違うほどの轟音の中で雲雀恭弥は目を覚ました。
雲雀の眠りを妨げる愚か者はどこの誰か。
寝起き直後の最低の気分であったが、爆音の中現れた人影に邪悪な笑顔でにんまりとする。
なるほどなるほど、今朝一番の客は、有象無象の草食動物よりは骨のあるやつ。
つまり朝食前の運動に持ってこいである。
雲雀はぺろりと唇をなめると、トンファーを両手に大量破壊兵器ハリネズミを従えて黒に白でバイピングのしてあるパジャマを着たまま、爆音を発生させた鬼の形相で立つ銀髪で煙草をくわえている風紀違反者に、人の家を訪問する時の作法を教えるために向かって殴りかかった。

……

朝の運動を終えた雲雀が、「ねえ」と呼べばすぐに飛び出てきた(実は今日の当番で庭のどこかにこっそり侍っていたのであるが、雲雀は興味ないので詳しいことは割愛の)リーゼントAに後始末を命じ、諸々の朝の支度を済ませた後、母屋で朝食にありついた。
本日の朝食は、籠に入った色とりどりの小付け七色盛り、鰆の西京焼き、出汁巻き卵、鮑のあんかけご飯と本枯れの鰹節と頭ちぎったイリコでダシを取った味噌汁である。
米味噌醤油は日本人の心であるからして、一つも残らずしっかり食べたいのだ、しっかりと。
もちろん焼き海苔も忘れずに。
なんていったって朝ごはんは元気の素。
しっかり食べるからこそ雲雀恭弥は元気いっぱい風紀活動を行えるのである。
しかも今日は朝から真面目に運動したので、雲雀はご飯を二杯おかわりした。
やはり米を食べることは大事である。米を食べるのと食べないのでは出せる力に明確な差がでる。
炊飯器ではなく土鍋で炊かれた米は、よく噛んで食べれば口中に米のほんのり甘い風味が広がって雲雀を満足させた。
朝食に満足した雲雀は、風紀の指導要綱に『朝ごはんしっかり』を付け加えるよう副委員長に指示することを検討しながら食後の濃いめのお茶を手に取った。
そしてそのお茶を飲もうとしたときに、おや、と思う。
普段は特に意識しないが今日はふと何かしら思って飲む前にお茶を見てみたら、見事な茶柱が立っている。
その様子はさながら緑の荒野に威風堂々聳え立つ電柱のようである。

「うん」

雲雀は一人満足げに頷いた。今日はなかなか良い日になりそうである。
そしてお茶をくいっと飲んだまさにその時に、庭の方から今度は「極限!」とかいうよーく聞き覚えのある叫び声が聞こえてきた。
朝から続く雲雀家への不法侵入者はどうやら庭から突撃することが好きらしい。
さぞ芝生を踏み荒らしてくれていることであろう。
何度言っても分からないあの男には身体に叩き込んで庭から来るなと教えてやる必要がある。
雲雀は食後の運動をするべくトンファーを両手に持ち、こきりと首を一度鳴らすとすくっと立ち上がった。
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