□彼はスーパースペシャルラッキーマン
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極限男の残部の処理を(Aが銀髪の絶賛処理中だったため、即座に交代要員として派遣された)リーゼントBに任せた後、雲雀は自慢の風紀の腕章が付けられている学ランを肩にかけた。
今日は公休日なのだが、風紀委員長雲雀恭弥には関係ない。
休日イコール草食動物が登校しない日、くらいの認識である。
身嗜みをすっかりと整えたところで、黄色い鳥が並中校歌を歌いながらどこからともなくやってきて雲雀の頭の上にとまった。

「君、また音ずれてる」
「ぴ」
「いい加減正しいメロディー覚えなよね」
「ぴ!」
「ああ、そういえば小動物も音階ずれたまま歌っていたね」
「ツナヨシ!」
「そう。今度一緒に特訓だね」
「トックン!」
「うん」

鳥と会話しながら廊下を歩けば玄関である。

「恭弥さま、いってらっしゃいませ」
「うん、いってきます」

玄関まで見送りに出ていた家人に送り出され、家の門を出た瞬間、超直感も持たないくせに雲雀は常人ならざる反射神経で襲ってきた刃を避けてみせた。
驚いた鳥はぱたぱたと飛んで行って雲雀から離れ、今は電線にとまってこっちを見ている。

「ワォ」
「あ〜あ、惜しかったのな」
「やってくれるじゃないか」

どこで隠し方を習ってきたのか。先ほどまでは綺麗に隠しきっていた殺気がぎらり。
目の前の好青年が出したものだとは思えない。

「君のその顔、小動物にも見せてやりたい」
「わりぃーけどその予定はねーんだ」
「そう、残念」

残念とは言ったけれど、実はそれほど興味はない。
朝の通学の退屈しのぎに持ってこいの相手の出現に、雲雀はある意味とっても無邪気ににっこりしながらハリネズミを呼び出した。

……

少し道草を食ってしまい予定時刻より遅れて雲雀が並中に着いたところ、並中の校門前で金髪の不審者を発見。しかも群れのおまけつき。
校門前に大仰な外車で乗り付けるなど迷惑極まりない。しかも群れまで引き連れて不快極まりない。
即座にロールに声をかけて雲ハリネズミを打ち込む。

「うぉお!?いきなり何するんだ恭弥!」
「うるさい。ロール、次」

きゅう!と返事をするとロールは分裂増殖しターゲットにしやすい目立つ金髪めがけて次から次へと突撃をかましていく。
ロールの攻撃を避けながら隙間を縫うように襲いかかる鞭をトンファーでさばき、またロールに命令をする。
数ターンお互いにやりあったときだ。

「ぅおっ!?」

緊迫した場にそぐわない素っ頓狂な声が響く。
ロールの攻撃でいつの間にか群れと分断された金髪は、己の武器で手足をぐるぐる巻きにされて転がっていた。

「……萎えた」
「ちょっと待ってろよ恭弥、いま、この、うぐ!?」

と意味不明な音を発しながら芋虫のようにもごもごと蠢いている姿を見ていると、流石の雲雀ですらも戦闘意欲が萎えた。
古くなった大根の葉っぱよりもしなしなで
ある。
ロールに命じて特大ハリネズミを打ち込んでやれば聞こえてきた「ボスー!?」という野太い叫び声をBGMに雲雀はさっさと校門を後にした。
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