□つきあってるのに!!
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付き合ってるのに片思い。
そういうことって、結構ある。
雲雀恭弥と付き合ってる綱吉もそう。
そもそも、付き合ってること自体、綱吉はいまだに不思議に思っている。
だってだって、綱吉のお相手はあの雲雀恭弥だ。
「ヒバリさん!好きです付き合ってください!」
と、ぷるぷる顔を真っ赤にして告げた綱吉に、雲雀はこくりと頷いて、
「うん。いいよ。それなら明日放課後応接室に来て」
と言ったことから2人のお付き合いは始まった。
で、翌日、「付き合うってどこに?戦闘?」って雲雀に言われることを覚悟して応接室を訪れた綱吉に、雲雀は『雲雀恭弥・沢田綱吉 お付き合い十則』なるものを渡してきた。
曰く、
「一、 風紀を乱さず清く正しい男女交際を心がける事
二、お互いを真摯に想いあう事
三、お互い、相手以外の異性と必要以上の親交を持たない事
四、群れない事
五、お互いの事をよく考え、お互いの嫌なことはしない事
六、挨拶はきちんとする事
七、嘘はつかない事
八、隠し事はしない事
九、喧嘩をしたら必ず悪い方が謝る事
十、雲雀恭弥は沢田綱吉を大事にし、沢田綱吉は雲雀恭弥を大事にする事」
などなど。ぜんぶで10のお約束。
ご丁寧に巻物に流麗な字で書かれたそれを渡されたのだ。
「ヒバリさん、これ……!」
「うん。あれから僕なりに考えてみたんだ。こういうのは先に決めていた方がいいと思ってね。どう?」
「最高です!」
綱吉はこぶしを握り締めて叫んだ。
実のところ、10ある約束のうち2個目を読んだ時点で綱吉の頭からはすべてふっと飛んでしまっていた。
ちなみに二項目、「真摯」という単語は読めず意味も分からなかったのだが、それでも言わんとしていることはわかる。
だって!「想いあう」である。それだけで綱吉にとって最高であった。
一方、雲雀の方も綱吉の返事に大変満足したようであった。
うん、とご機嫌な様子で頷いたのがその証拠だ。
「そう。じゃあ何かあったら言って」
「はい!」
「以上だよ。今日はもう帰っていい」
「はい!ありがとうございました!」
綱吉は興奮気味に頬を染め、はきはきと挨拶をしてその場を去った。
付き合い始めなのにあんまり甘い雰囲気はないが、2人ともそれに疑問さえ抱いていないんだからいいのだろう。
で、一人で思い出し笑いでえへえへしながら帰った綱吉は、巻物をニヤニヤ開いて10項目前半を見て嬉しさのあまり卒倒し、起き上がって10項目後半を読んで涙しながら頷いた。
「オレ、きっときっとヒバリさんを大事にします!」
と相手がいないところで叫んだ。
そのせいで綱吉は、家庭教師の先生に「うるせえ」と小言をもらったが、デヘデヘしてあんまり聞いていなかった。
こうして2人はいわゆるお付き合いを始め、そしてそれ以来この十則にそってお付き合いをしている。

しているのだが、綱吉はやっぱり、付き合っているのに自分の片思いだと思っている。
イヤ、確かに付き合う前と後では劇的に変わった。
まず、雲雀が綱吉に挨拶してくれる。例の十則にのっとって(6項目、挨拶はきちんとする事)だろうが、朝、わざわざ綱吉の元に雲雀自ら出向いて、素敵な声で「おはよう」と言ってくれるのである。
さらに髪の毛もふわふわと撫でてくれる。
それに、7項目と8項目(嘘はつかない事・隠し事はしない事)に則っているのであろうが、たとえばちょっと遠出をするときなんかは綱吉の元にやってきて、遠出の理由とおおよその期間を教えてくれる。

一週間に一回、朝の風紀検査のときか、家庭教師のリボーン先生発案のドタバタが巻き起こるか、くらいでしか雲雀を見つめる機会なんかなかった綱吉にとって、ほぼ毎日のように雲雀と会って言葉を交わす(といっても「おはよう」「おはようございます!」「今日もいい天気だね」「はい!」「今日も風紀を乱さないようにね」「はい!」くらいしか会話していない)ことができる今はまさに奇跡、といってもよかった。

しかし、人間というのは大変欲深い生き物である。
慣れてくると、それだけでは物足りない、と思ってしまうのだ。
もっともっと、と思うから、不満も溜まってしまう。
そう、今の綱吉には雲雀に対する不満があった。
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