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□躾と鎖
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「西谷。」


東峰旭の場合


三限目の情報処理の授業で移動教室だった俺は、別棟の三階から一旦一階に降りて紙パックの自販機に飲み物を買いに来たところだ。
何にしようかと悩みながら財布を尻ポケットから出そうとして何気無しにふと顔を上げると、体操服姿の西谷がクラスメイトと昇降口に向かって話しながら歩いているのを見つけた。
次の授業もあるからダメだと分かっていたのにもかかわらず俺は思わず声をかけてしまった。
もちろん西谷はバッと勢いよく振り返り、クシャっと笑うとクラスメイトに手を振ってから俺の方に迷いなく真っ直ぐ走ってくる。
子犬が小さな尻尾を一生懸命振りながら走り寄ってくるように見えた。
「旭さん!」
「体育だったの?」
「はい。サッカーしてました。旭さんは移動教室ですか?」
首筋にジンワリと汗を浮かばせた西谷が笑う。
「俺は今から教室に戻る所だよ。」
飲み物を買いに寄っただけだよ、と言いながら俺はイチゴ・オレを二つ買って一つを俺の手元の教科書を見ている西谷の首筋にわざと当ててやった。ほんのちょっとした悪戯のつもり。
「うひゃあ!」
油断してたのだろう。肩を竦めながら悲鳴をあげた。思わず笑みが浮かぶ。
「ビックリするじゃないですか!」
「ごめんごめん。これ、あげる。汗かいているから喉渇いてるだろ?」
「あざっす!」
並んで紙パックにストローを刺す。
よほど喉が渇いていたのだろう西谷はストローを口にすると殆ど半分を一気に飲み干してしまった。
休み時間は短い。ゆっくりできる時間はあまり無い。が、その短い時間で西谷に会えたのはラッキーだ。
身長差25センチ…並んだ時に時々上からこっそり西谷を盗み見るのが好きだ。
首筋から鎖骨に向かって流れるラインが汗でしっとりしているのがエロくて思わず喉がなった。
視線を更に下ろしてみると、ハーフパンツから伸びた日に焼けてない白い脚。程よい筋肉は付いているけど、俺みたいなガッチリした硬い筋肉じゃなくて柔軟性に富んだ柔らかい筋肉だ。
触りたい衝動に駆られた。
西谷の足元にしゃがんで、膝小僧を指先でくすぐりキスをし、そこから太腿を撫で上げハーフパンツの裾から手を忍びこませる。羞恥で震える筋肉を楽しみながら足の付け根を…
いやいや、ダメだ。
グッとイケナイ妄想を堪えているとズズッと音がした。西谷がイチゴ・オレを飲み干した音。
「はぁ〜うまかった〜。」
ストローから口を離して西谷は満足そうに唇を舐めた。
項から一筋汗が首筋から鎖骨に転がり落ちる。
俺はここが学校だということを忘れ無意識に動いていた。
無防備なままの西谷の鎖骨に唇を寄せ、その流れた汗を掬い流れに逆らって首筋から項まで舐め上げる。
ヤバイな…スイッチ入った…
西谷は全身固まった後、ブワッと顔が赤くなって口をパクパクさせた。
「なっ…なっ…」
「西谷…」
壁に押しやり逃げ道を奪ってから見られないように俯いた西谷の赤い顔を覗き込む。
多分…俺は今、雄の顔をしてるはずだ。困った事にまっ昼間からサカっている。
「あ…さ…」
西谷の細い喉が鳴った。
もしかして…期待してる?
「四限目終わったら部室においで。一緒にお昼食べよう。俺、鍵当番なんだ。」ワザと声を落として耳元で囁いてやると、目の前の耳朶が面白いくらいに真っ赤に染まった。
普段は男らしいくドーンと構えているけど、こういった色情めいた事には奥手らしい。
「食べ終わったら…イケナイこと…しよか。」
更に声を低くして囁いてから耳朶をペロリと舐め、ビクついた西谷の体を離す。
タイムリミットだ。
後四分間もすればチャイムが鳴ってしまう。西谷だってまだ体操服のままだ。
「また後で…ね。」
25センチ下の頭を撫でて、行儀は悪いけど飲みかけのイチゴ・オレを飲みつつ教室に向かう。
「信じらんねぇ!この…エロ魔人!」
西谷の照れ隠しの怒声を聞きながら俺は背後を振り返り、何時ものように眉毛を下げてヘラリと笑い手を振った。
校舎に入ってから誰にも気づかれ無い程微妙に口の端を歪める。
俺はへなちょこだけど独占欲が強い。だから誰にも西谷を渡さ無いし、渡すつもりも無い。
それが背徳的な事であろうとも…
初心な西谷にキモチイイ事ばかり教え込んで、俺から離れなくなるよう身も心も躾けるんだ。
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