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□The end in the world
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「なぁ……イ・ミヌ、いっそ…俺と一緒に行かないか?」








(何処に?)




(いや、何処でもいい、俺を連れて行って…ここではない何処かへ、お前と一緒なら何処へでも行くよ。)




あの時、心で思った言葉を口に出していたら…






何かが変わっていたんだろうか?









〜T〜







ガランとした倉庫のような場所に捕われて来てから数日が過ぎた。





理由は特に無いが、その間俺は一言も喋らなかった。





俺をここに連れて来たエリックも、必要最低限の事しか喋らなかったが、俺に対する態度や行動を見ていると、まるで誘拐犯らしくなく、むしろ拾っては来たものの全く懐かない野良猫を、苦労しながら懸命に世話をしている子供のようだった。





少し前には「寒くないか?」と言いながら、自分と俺を繋いでいる手錠を外して、自分の着ていた上着を着せてから再び手錠を繋ぎ、片手で器用に携帯ゲームをしていた。







そんなエリックに、俺は初めて口を開いた。







「お前は俺の事、あのジジイの何だと思ってんの?」





ゲームに集中していた時にいきなり喋りかけられて驚いたせいか、持っていたゲーム機を床に落としてしまい、唯一の娯楽機器が壊れていないか心配しつつ…





「資料には息子って書いてあったけど……違うのか?」





と、真っ当な答えを返して来た。






「息子…か…まぁ確かに戸籍上は…な……」





「戸籍上?って事は、養子って事なのか?」






「まぁそれも戸籍上って事だな。だいたいあのエロオヤジと俺が本当の親子だったらそれこそサイテーな関係だな……。周知の事実だけど、俺はあのジジイの女なんだよ。」







「女?!だってお前は男だろ?!」




「アンタ……何ボケた事言ってんだよ、そんなんでよくこんな稼業してられんな?この流れで女って言ったら愛人って意味だろうよ、いや愛人ってのはちょと違うか?愛人ってのはとりあえず心も身体も愛されてんだよな?アイツが愛してんのは俺の身体だけだから………つか、愛とか…キモチワリィ。」








俺は……愛なんか知らない。





弱小ヤクザの組長の親父と、それこそ愛人だった顔も知らない母親の間に、特に望まれずに生まれた俺は、物心ついてから今まで、誰かに心から愛された記憶などひとつも無い。





だからホントの親父が下らないヤクザの権力争いに巻き込まれて犬死にした時も、直接手にかけた訳では無いが、事実上親父を殺した張本人の今のオヤジに養子として引き取られて、息子とは名ばかりの半ば性奴隷のような生活をしている今も、何となくそういうものかと…



自分には愛とか幸福とか、そんなモノは一生無縁なのだと、特に望みもせずに、端から見ると憐れすぎるであろう自分の現状を、特に顧みる事なく生きて来た。







俺のどうでもいい告白の後の気まずい沈黙を破るように、エリックは口を開いた。






「飯食う?」







「……なんだよそれ?この話の流れで急に飯って…まぁいいけど…、お前ってやっぱり変な奴だな。」






変と言われたのが最大の褒め言葉のように、子供みたいに笑いながら手錠を外し、綺麗な大きな手で俺の頭を優しく撫でてからラーメンを作りに行くエリック。







その後ろ姿を見ながら…




生きてる意味なんて無いと思いながらも、ただ流れに任せてなんとなく生きて来た俺にとって、エリックとの出会いは神様からの最初で最後のプレゼントなのかな?







なんて…


柄にもなくそんな事を考えていた。








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