短編

□今日で最後
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ぼうと月を眺める家康の隣に無言で座った。
「どうした?」
「遂に明日だね」
「あぁ...」
どこか遠くを見る家康には今、 石田三成が見えているのだろうか。
「君は本当に莫迦だね」
「ハハッ...まいったな」
殺す覚悟はできてる。
でも彼は石田三成を忘れることは一生できない。忘れれば楽なのに
忘れられない。忘れる覚悟がないんだ...
「君は弱いね」
「あぁ 知っている」
石田三成は忘れられない。でも多分彼は私のことは簡単に忘れるのだろう
それを言葉にすれば彼は否定するだろうか?
あぁ、こんなことだったら東軍ではなく西軍につくべきだったかもしれない。

裏切ってしまおうか?
いや、裏切っても彼は簡単に許すだろう。
簡単に忘れるだろう。
まぁいいさ

「本当にどう仕様もないよ」
お前がな、と心の自分が返答した。
あぁ本当に私は莫迦で弱くてどう仕様もない。

太陽

私はそこに手は届かないのだ

「なぁゆめ」
「なんだい」
「わしは勝てるだろうか」
「さぁ、知らないよ、そんなの戦が終わったらわかるさ」
「そうだな...」

戦が終わったら隠居しよう。
恋をして、お嫁さんもらって、子供を作って
のんびりまったりと海の見える家で孫に囲まれて死にたい。

家康へのこの想いは戦場に埋葬しよう。

今日が最後だ。

「ゆめ、死ぬなよ」
「......」
「この戦おわったらまたこうやって一緒に月を見ないか?」
家康は鋭い。
「......」
「なぁ、答えてくれ」
「それはできない」
「ゆめは厳しいな」
「そうだね」

あぁ早く明日になれ

早く地中深くに埋めなきゃ

誰にも見つからないように

掘り返されないように



恋心を土に還そう

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