マシュマロだって恋をする
□次元さんといっしょ
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「…詐欺だ。」
ある天気の良い昼下がり、ルパン一味アジトでの事。
無駄に広いリビングの中央、シンプルなテーブルに突っ伏したまま優芽は呟いた。
「あのな、詐欺師と泥棒は違うんだぜ?」
「いーや、これは詐欺だ。」
「なんでそうなる。」
「じゃあなんで五ェ門さんがいないの〜!!」
今この場所には優芽と、同じくリビングのソファに腰掛け愛銃の手入れをする次元
のみ。
「どうせどっかの山奥で修行でもしてんだろうよ。不二子じゃねぇが、あの野郎は修行が恋人みてぇなもんだからな。」
「じゃあ不二子さんは?」
「ルパンと買い物。」
「じゃあ今日ここにいるのは私と?」
「俺だけだな。」
銃から視線を離す事なく、実にいいテンポで答える次元。
その丁度背後にテーブルはある。
大袈裟な程ため息を漏らして、優芽は腰掛けたまま上半身を起こした。
「こんな日にお独りですか。次元さんは寂しいですな。」
「お前もな。」
「せっかくのクリスマスなのに…」
「せっかくのクリスマスに仕事はどうした?」
「休み…上司がね、せっかく若いんだから今年は休んで誰かと食事でもしなさいって半ば強制的に…」
「へぇ、そりゃあ随分お節介な話だな。」
磨き終えた銃を壁に向かい構えながら、哀れみを込めた声色で笑う。
「みんな夜には帰ってくるかな?」
「何か厄介事に巻き込まれなけりゃあ、ルパンは帰ってくるんじゃねぇかな。」
「不二子さんと五ェ門さんは?」
「あの二人は気まぐれだからなぁ。特に不二子は。」
「はぁ…」
あからさまに肩を落としテーブルに額を合わせて何度目かわからないため息を吐く姿が背中越しでも想像できてしまい、次元は口角を上げたままくわえた煙草に火を着ける。
「…次元さんや」
「なんだ?」
「ちょっと出掛けませぬか?」
「行くなら一人で行け。」
「一人では、ちょっと…」
「チッ…なんで俺が家畜の散歩に付き合わなきゃならねぇんだよ。」
口ではそう言いながらも、銃を腰のベルトに収めながらソファから立ち上がる次元。
「おい、行くんだろ?早くしろ。」
「うん!!」
元気いっぱいの返事と同時に、自室に上着と愛用のリュックサックを取りに向かう優芽。
やれやれ…と煙草の煙を吐く次元は、いつもの仏頂面ではなく
困った妹ができたもんだと言わんばかりに、優しい目を帽子の下から覗かせるのだった。