マシュマロだって恋をする
□酒は飲んでも飲まれるな!
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「いや、ですから五ェ門さん。そんなこと言われましても…」
「ならば拙者も行く。」
「ダメに決まってるじゃないですか…」
「なら行くな。」
「…………はぁ。」
恋人同士になってから1週間が過ぎた頃…
自他共に認める相思相愛で結ばれたはずの二人に、早くも不穏な空気が漂い始めていた。
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ードンッ!!!!!!
「ぶっ!」
夜10時過ぎ。
アジトのキッチンにて煙草を片手に1人晩酌を楽しんでいた本日洗い物担当の次元は、突然背後から襲い掛かった爆音に思わず口に含んだばかりのバーボンを豪快に吹き出した。
振り向けばムスッと膨れ面の優芽が冷蔵庫から牛乳パックを取り出したところで、どうやら先程の爆音は冷蔵庫の扉を閉めた音のようだった。
「…お前はっ、物を大事にしろってとっつぁんに教わらなかったのか!バーボン返せ!」
「すみませんでしたー」
「なんだぁ?その態度は!」
「あ〜あ〜もう。な〜にケンカしてんの?」
膨れ面のまま目も合わせず小学生のような口調で謝る優芽に説教を始めようと次元がツカツカ歩み寄った所に、空いたワイングラスを片付けようとルパンがキッチンに現れた。
「別に。」
「こらこら優芽ちゃん、イライラしちゃだ〜めよ。オジサンに訳を話してごらん?」
「……五ェ門さんが、新年会に行くなって…。」
「「あー…」」
この短い言葉だけで全てを察した2人は同時に天を仰いだ。
新年会と言えば酒を飲む。
酒と言えば先日の初詣で見た優芽の姿。
そう、優芽は酔うと男に絡んで挙げ句に誘い始めるからたちが悪い。
それを知っているこの2人には、五ェ門の反対する気持ちがよーく解った。
「その新年会は、男も来んの?」
「来るよ。だって会社の新年会だもん。」
「「あーーー…」」
“会社の”と聞いた途端に今度は優芽の事情も解り、2人は再度天を仰ぐ。
「そっかぁ〜…じゃあ行かないってわけにはいかないよなぁ。」
「会社の新年会とあっちゃぁ、飲まねぇわけにもいかねぇもんな。」
「でしょ!?なのに五ェ門さんたら、『どうしても行くなら自分も行く。それがダメなら行くな。』って…。」
「あら、五ェ門ちゃんそんな女々しい事言っちゃってんの?」
「だがルパンよ。あの時の優芽を見たろ?他の男にあんな事されてみろ。五ェ門の野郎、まーた切腹とか騒ぎ出すぜ?」
「……酔った私って、そんなに酷いの?」
「「そりゃあもう…。」」
「……でもさ、新年会だって仕事の内だし酔い潰れるわけないじゃん。」
「それもそうだわな。よ〜し、んじゃ俺様が説得してやっか!」
「ほんと?ありがとうルパンさん!」
ルパンは任せろと言わんばかりに胸を叩いてキッチンを出ていった。
その背中を優芽は嬉しそうに、次元はルパンの考えを察して口元を緩めながら見送った。