泥棒達と風使いの少女
□あたたかい場所
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「はい!じゃあ目を開けて!」
「…!」
ルパンから目を閉じるように言われ、何も見えない中手を引かれて連れて来られた場所。
「じゃ〜ん♪ここが新しい美羽ちゃんのお家です!」
「お家…!」
目を開けた美羽は、ルパンと手を繋いだまま固まっている。
自分の家など、もう記憶の片隅にも残っていない。
「どうした?入っていいんだぜ?」
次元が優しく背中を押す。
たどたどしく歩き出した足で、まず向かったのはリビングの中央にある大きなテーブル。
そっとルパンが椅子を引き、美羽の体をヒョイッと持ち上げ座らせてやる。
「座り心地はどうかな?お姫様♪」
「…すごい、すごい!!」
床に届かない足をバタつかせて大興奮の美羽。
「すごい?何がすごいんだ?」
次元の問いかけに、首を傾げる。
「お家が、すごい!!」
純粋すぎる目を輝かせて見上げてくるものだから、次元も折れて
「そうかそうか、そりゃ良かったな。」
優しく頭を撫でてやると、嬉しそうに笑って部屋をキョロキョロと見回す。
そして、はっとしてまた足をバタつかせる。
「あっち!あっち行く!」
傍らで腕を組み立っていた五ェ門の袴をクイクイ引っ張りながら、窓辺を指差す美羽を
五ェ門は「忙しい奴だ。」と笑いながら抱き上げ、そのまま窓辺へと運びゆっくり降ろす。
「すごい!すごい!」
窓の外は、のどかな自然の景色。
ここは最近ルパン達が使用しているアジトで、眼下には大草原が広がり近くには森がある平和な土地。
「さぁお姫様、こっちいらっしゃい。」
「うん!」
ルパンの呼び掛けに大きく頷いて、リビング奥の廊下へと駆けて行く美羽の無邪気な背中を
次元と五ェ門は微笑ましく見送った。
「さ、この扉を開けてごらん?」
「うん!」
ドキドキしながら体の何倍も大きな扉をゆっくり開ける。
その先は、ベッドやクローゼットが置かれた広めの部屋だった。
「はい、ここは今日から美羽ちゃんのお部屋!これからはオジサンがこのお部屋い〜っぱいになるくらい好きな物な〜んでも買ってあげっからね♪」
「ほんとか!?」
「泥棒さんは嘘つきません!欲しい物はオジサンにな〜んでも言いなさい♪」
「欲しい物…」
「そ♪美羽ちゃんは何が欲しいのかな?」
ルパンの問いに美羽は一瞬悩んだが、すぐに顔を上げて
「美羽、家族が欲しい!」
真剣な顔で訴える幼い瞳に、ルパンは目を丸くして
「何言ってるの美羽ちゃん、俺達はもう家族じゃないの!今日から一緒に住むんだからさ♪」
「ほ、ほんとか!?ルパンは、美羽のパパになってくれるのか!?」
「も〜ちろん♪ルパンパパがず〜っと一緒にいてあげるさ♪」
「約束だぞ!?絶対だぞ!?」
必死に何度も聞いてくる姿が可愛くて、ルパンはその小さな体を抱き上げる。
そして頬に唇を寄せて、
「パパを信じなさい♪」
優しく、言い聞かせるように囁く。
くすぐったそうに目を閉じた美羽は、ぎゅっとルパンの首にしがみ着いて安心したように頷いた。