泥棒達と風使いの少女
□溺れた少女
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「なぁ、ルパンよ。」
「ん〜?」
「ん〜?じゃねぇよ。なんだって、こんな柄でもねぇ事しなきゃなんねぇんだ?」
「そ〜んなの決まってんだろ?可愛い美羽ちゃんのためでしょーが。」
「…………」
相棒の暢気な声に思わず舌打ちをしながら、次元は視線を少し離れた所で大ハシャギしている少女へと移した。
「五ェ門!!あっちだ!!あっち!!」
「むっ…テヤァーーー!!」
「あー!!逃げられたぞ!?五ェ門!!」
「か、かたじけない。…拙者とした事が…たかが鳥1羽捕まえられぬとは…ッ」
ここは、町外れにある大きな公園。
野球ができる程の広大な芝生の上で、何組もの家族やカップル達がカラフルなシートを広げて各々持参した弁当を仲良く食べている。
そんな中、質素なブルーシートの上にその辺で買い漁った酒やつまみを広げるルパン一味は異彩を放っており
周りはそれを不思議そうに見ていた。
シートには、頭の後ろに手を組んで空を見上げるように寝転がるルパンと片膝を立てて煙草をくわえる次元。
そんな2人より数メートル離れた大きな木の下では、高い枝にとまった雀を捕まえようとしていた美羽と五ェ門。
風を禁止されている美羽は、仕方なく五ェ門に肩車をしてもらい手を伸ばしていたが届かず
五ェ門が気合いを入れ飛び跳ねた所、その声に驚いた雀は素早く逃げてしまい…
ポカポカと頭を殴ってくる美羽に、五ェ門は首をすくめて修行の足りない自分を嘆いていた。
「…しかし、見事な変わりようだな美羽の奴。」
「ヌフフ…魔法使いのお婆さんのおかげで、す〜っかり大人のレディーになったろ?メルヘンチストの次元ちゃん♪」
「…………」
ニヤニヤと笑ってからかうルパンを無視して、次元は傍らの缶ビールを手に取りグイッと飲み干す。
そして立ち上がり、未だ無邪気にじゃれ合っている美羽と五ェ門の元へと向かった。
「おい美羽、止さねぇか。せっかくのレディーが台無しだぜ?」
「あ!次元!!だって五ェ門が…!!」
「ったく…中身はガキのまんまだな。」
フワリと美羽の体が浮いて、次元の腕に抱き直される。
不思議そうに首を傾げる美羽をそのまま地面に降ろすと、その女性らしく髪型を変えたばかりの頭に手を置いて
「あんまり五ェ門おじさんを苛めるなよ。」
「なっ…何を言うか!お主の方が余程おじさんであろう!」
「違うぞ!!次元はママだ!!」
ーゴスッ!!
「……違うぞ!!次元もおじさんだ!!」
次元に拳骨をくらい、頭に大きなタンコブを作りながら美羽が言い直す。
そんな平和な泥棒達の様子を、公園内の草むらから双眼鏡を覗き込み闘志を燃やす1人の男がいた。