* NO.6

□Red cherry
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Red cherry 
*Do you remember?*   
  



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あの嵐の夜、与えてくれた束の間の安堵が
俺にとってどれだけ大きなものだったか あんたは知らない。

暗闇の中で、運ばれてきたチェリーケーキはものすごく美味くて
味わう暇もなく平らげてしまった記憶がある。

何年も前のことなのに
香りを思い出すだけで、時をも思い出させるものだった。

だから、あんたにも・・・

「はっ、何考えてるんだ俺は。」

午前8時 目が覚める。
地下室のベッドから起き上がると、
テーブルの上に小さな紙が置いてあることに気づいた。

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ネズミへ

今日は朝からイヌカシに仕事を頼まれたんだ。
新らしい犬が生まれたらしいから、手伝ってくる。
朝食、ちゃんと食べていくんだぞ。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



その置き書きの横には、サラダに食パン、目玉焼きという
体によさそうなものが作ってあった。

「・・・母さんかよあんたは。」

俺は眠たい目を擦りながら、ソファに腰を下ろす。
少し冷めた朝食に手を伸ばして口に運ぶ。

「ん。 」
あまりの美味しさに噎せてしまいそうになった。

ああ、そういえば、しばらく体調が優れなくて
何も口にできなかったんだっけ。
だからか。
紫苑が作ったって言っても焼いただけのようなものだしな。



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