* NO.6

□祈り
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祈り



*Sleepless night*



古ぼけたベッドに寝転んで、息を付く。

劇場の仕事は、『別の自分』を演じるからか 

自分という人間がよくわからなくなる時が増えた。



そんな俺でも、いつだって信頼できるあんたがいる。

たとえ、俺があんたを殺そうと、裏切ろうと、

あんたは俺の手を絶対に離さない。



変わった奴で、読めない奴だった。



寝転がれば、天井が映る。

キリキリと胸の辺りに痛みが走った。

次第に視界が歪んでいく。



『寂しい』




心に穴が開いたように、感情が漏れていく。


 
あんたの温もりが欲しい。




あの嵐の夜みたく、体温を感じながら眠りたい。

ここにいるから、って 一人じゃないから、って 



あんたは俺のこと、強いなんて言ったけど

今の俺は、あんた無しじゃ生きられないくらい 弱い人間なんだよ



・・・ここで、待ってればあんたにもう一度会えるのか?




あんたの温もりは、もう戻らない。




もう思い出せない 忘れてしまった 声が聞きたくて、目を閉じてみる。

せめて夢の中でなら、会えるかも なんて期待してるんだ。




寂しくて眠れない夜

俺は、祈りながら目を閉じる。





「お願い せめてもう一度 その声を聞かせて。」






fin.

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