* NO.6

□桃色
3ページ/5ページ

_


「いらないのか?」
ネズミは意地悪な目で上から見下してくる。

何だかムカついた。
けれど食べたかったから口を開くと

「そうか、いらないんだ」
パクリと桃色のケーキはネズミの口に運ばれてしまった。

「あっ!! いまのなしだよ!」

「そんな怖い顔してちゃあ、あげないぜ?」

そう言うネズミの頬には桃色のジャムが付いていた。

普段あまり見かけない幼さに遭遇して、可愛いだなんて思ってしまう。
少し悪戯返しをしてみたくなって、



立ち膝になり、ネズミの肩に手を乗せる


「うん?」


少しずつ頬に近づいて


「ちょ、紫苑?」


頬に触れて

「っ・・・」


まだ不器用な舌で
甘い桃色を舐めとった。

「ジャム、ついてるぞ。」

そう言うと、
ネズミが珍しく顔を真っ赤に染めていて
なんだか嬉しくなった。


すると突然
豹変した鋭い瞳に捉えられた。

「紫苑、あんまり調子に乗るなよ?」
笑顔が一時停止する。

それと同時にネズミが皿からナイフを取り
あの夜と同じ、俊敏な速さで僕を地面に押さえつけて
首にナイフをあてがっていた。


「・・・ネズミ、嫌だったのなら謝る、ごめん。」


灰色の瞳にそう言うと


「ほんと、鈍感だよな。」

「え?」

「あんたがいると、おかしくなる」

ふわっとネズミの力が抜けて、僕に覆いかぶさった。
ナイフが草花の隙間にカタンと落ちる。



_
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ