海神の娘

□デート1
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「暑い。あっっつい!何この気温。本当に太陽有給取ればいいのに!」

木々は青々と生い茂り太陽がギラギラと照りつける中、自転車で自宅まで駆け抜ける。7月終盤。前期末の考査を終え、約1ヶ月振りのデートに向かう準備のため自宅を目指していた。そんな中、携帯の着信音が鳴り響く。

ピリリリリ〜

「はーい。誰?」


自転車のスピードは落とし、漕いだまま電話にでる。

「 潮 か?私だ。」

電話の主は恋人の恵比寿だった。

「海里?何どーしたの?」

「ああ。仕事が速く片づいてな、そっちに車で迎えに行こうかと思うんだが…まだ家か?」

「やった!今学校終わって帰る途中。家で待ってる!」

この炎天下でバスに乗るためとはいえ一分でも外に出かけるのは苦痛で、恵比寿の提案はとてもありがたい。さっきまで暑さに歪んでいた顔は喜色満面だった。

「じゃあ40分後には着くから。…風の音がする。自転車をこぎながら電話しているのか?まぁ構わないが気をつけろよ。」

「はいはい。スピードは落としてるよ!じゃあ後でね。」

ピッ

家までは後10分ほど。軽くシャワーを浴びて、買ったばかりのワンピースに腕を通して化粧をする時間はある。恋人は新しいワンピースを誉めてくれるだろうか?柄にもなく心が踊る。あと一息、と自転車を漕ぐ足に力を込めた。

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