海神の娘
□デート3
1ページ/1ページ
「あっつい…」
雲一つ無い青空を見上げてため息をつく。自宅前にはまだ恵比寿の迎えは来ていなかった。折角の化粧が落ちるわ〜とか、春は花粉症だし夏は暑いし冬は寒いしあー早く秋こないかな…などと考えながら迎えを待つ。
………………………………イラァ。パカッ
………………………………イラァ。パカッ
(携帯で時間を確認×2)
(遅い。遅すぎる。えっ?もう十五分くらい待ってるよ?えっ?車でしょ?まさか海里が運転してるとかは…有り得ないか。死人がでるしな。………イラァ。)
………………………………イラァ。パカッ
………………………………イラァ。パカッ
(携帯で時間を確認×2)
(……?連絡もないし。まさかね?事故った?いやいやいや、邦弥さんが一緒だろうし、海里一人で運転は流石にしないだろうし…。…いやそんなまさか…)
パカッ。(電話メールなし)
「あ〜もう!電話してみた方がいいのか「 潮 !!」な…海里!!」
物凄いブレーキ音を響かせながら目の前に止まったのは間違いなく邦弥が運転する車で、声をかけてきたのは待ち人の恵比寿その人だった。
「ちょっ!遅い!」
駆け寄りながら声を荒げる。これでも一応心配していたのだ。まぁイラつきの大半が暑さによるものとはいえ…。
「いや、すまない。途中、大国主に会ってな。共同訴訟の話からいなばちゃんの話にかわって…話が長くてな。」
「若。とりあえず、車に乗っていただいたら如何です?」
「そーさせてもらうわ。」
ドアを開けて恵比寿の隣に乗り込む。適度に冷房の利いた車内は天国だ。
「で、いなばちゃんが?」
カバンからタオルを取り出し汗を拭きながら話を促す。会うまではイラついていたが会ってしまえば怒る気も失せてしまう。惚れた弱みか、無表情で、でも目を輝かせながら話すこの男に良くも悪くも悪気が無いことはわかっているから。
「あぁ!いなばちゃんがな………」
こうして十分ほど車内で近況報告をすませ、車を出す。
「若、今日はどちらへ?」
「近くにパスタの美味い店があっただろう?そこへ」
「わかりました。」
「昼はまだだろう?食べてから映画でも行こう。見たがっていたやつが公開していたはずだ。」
「やった!あの冷製パスタのとこでしょ?あそこのバジルのなんとかってやつ食べたかったんだ!」
そう思うと一気にお腹が空いてくる。テストも終わって、恋人とデート。しかも気になっていたお店に映画!私の頭には、暑い中待たされたイラつきはもうなかった。
(若、良かったですね…あまり 潮 様怒っていなくて。ああ、暑いのが嫌いだし短気だしな…何より怒ると背後に龍が見えるんだ(遠い目)……………((ホッ)))