novel

□僕(私)の方がクレフを好き!
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クレフの精獣グリフォンとフューラは、時々主のことで喧嘩をする。言い争いになる原因はたいてい決まっている。どちらが精獣として優れているか、よりもいかに自分のほうが主を好きな思いが強いかということ。それがお決まりのテーマだ。自分のほうがクレフを好き。いや自分の方がクレフとの付き合いが長く、クレフのことをよく知っているから大好き。違う。自分が。いや違う。自分が。傍から見れば微笑ましいし、独占欲が強い子供のような会話だ。今日もそんな言い争いは始まったようである。

「僕の方がグリフォンなんかよりもずーーっとクレフのことが好きだし、きっとクレフも僕が大好きだよ」
「いいや、私のほうがお前よりも先に召喚されたのだ。私はお前よりもご主人と長い付き合いだし、慕う気持ちは誰にも負けない。」
「いいや、僕の方さ。だってクレフは僕を頼りにしているし、すーごく可愛がってなでてくれるし、なによりいつも笑顔でお前はいい子だなって言ってくれてるもん!」
「お前はのほほんとして緊張感がないから、いざという時召喚されていないではないか。ご主人が本当に頼りにしているのは私の方だ。」

 平行線の言い争いが続く。
そこへ偶然プレセアが通りかかかる。
(あら。またやっているのかしら。)
あの精獣たちがクレフのことで口喧嘩をしているのをプレセアはいつもにこやかに見物していることが多かった。
「またどっちが導師を好きか対決してるの?」
「プレセアさん!」
微笑みながらプレセアは二匹の精獣に近づく。
「大丈夫よ。グリフォンも、フューラも導師はとても頼りにしているわ。あなた達といる時の導師は表情が違う。」

 公の場にいる時には決して見せない、柔らかい笑顔。信頼しているものにしか見せないクレフ本来の素顔。

(そして、私もあなたたちに負けないくらいクレフが好きよ。)
心の中でぼそりとプレセアがつぶやく。

「だってさ、グリフォン。」
「プレセアさんの言うとおりだ。」

こうして今日の口論は終幕する。

当のクレフは、こんなやり取りがされていることを未だ知らず。

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