長編-僕がもう少し大胆なら
□第4章
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今日は転校してきて初めての体育の日。
体育ってほかの授業と違って特別緊張する。いろんな人と関わるからやろう。
誰と移動しよう、そう考えつつ綺麗な新品のジャージをかばんから取り出して小さめの袋に移し替える。ジャージを片手にふと窓の外を見ると葉のない木々が冬を物語っていた。
冬の新生活…まだ始まったばっかりや。
これから起こるであろうたくさんの戸惑いとたくさんの楽しみに胸が窮屈になった。
「彩ー!!」
結局、教室で愛菜とまーちゅんが声をかけてくれて体育館までご一緒することになった。
肌寒い冬の廊下で愛菜を真ん中に、横一列になりながら3人で歩く。
「なんかなあ、今年は球技大会2回あんねん。」とまーちゅんが話す。
それを聞いた愛菜は寒さに肩をすぼめながら「あー、そうやったなあ…」と力無く返した。
「もしかして愛菜は運動嫌いなん?」
隣の愛菜に私が聞くと「ちゃうねん、運動できすぎて、モテすぎて…やんな?笑」と横槍を入れるようにまーちゅんがからかった。
両手で抱え込んだジャージの袋を見つめる愛菜は「まあ、別に嫌ちゃうから。」と小さく笑った。
「ほんで、今年は冬がメインなんや!」意気込んだまーちゅんが声を大にして言う。
「そうなん?」
「うん!今年の夏はサッカー、テニス、ソフトボールやったんやけど今回はバスケとバレー、あとドッチなんやで。」
ここの学校の球技大会は毎年競技が変わるらしく、今年の冬はたまたま私の得意なバスケが抽選で選ばれたらしい。愛菜はどんな球技でもできるんやろう、球技大会の話には興味がなさそうに黙って私たちの会話を聞いている。
「あーたしかにバスケとバレーって球技大会っぽいよなあ。」
「彩はなんか球技得意なんある?」
「んー、バスケはちょっとやってたんやけど。」
「そうやったんか!なあ、愛菜、彩をうちらのチームに入れへん!?」
「せやなあ……ええんちゃう?」
愛菜がやっと会話に入る。愛菜の返事を聞いたまーちゅんは笑顔で前を向いて「彩、うちらのチームの顔やな!」と言った。
「そんなうまくないで。」
謙遜してこうやって返したけど、正直言うとバスケには自信があった。
小学校のころ3年間だけミニバスに通ってただけやけど、中学でも前の高校でも休み時間にはもっぱらバスケをしてた。
せやから二人と同じチームに入れたら何か変わるんちゃうかなって思う。
球技大会はクラスで上を目指す行事でもあるから、転校生の私にとってバスケのチームに入るのはクラスに馴染むのにも都合が良い。
期待してくれている二人にも、クラスのみんなにも自分なりにかっこいい姿を見せたい。
そんなわくわくとした気持ちを胸に、私は体育館に一歩踏み出した。
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