リクエスト
□場違い/さやみる
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♪スキッ!スキッ!スキップ!〜♪♪
この曲が終わったら次はうちらNMBの出番。
「みんなー、リハーサルやからって手ぇ抜かんといてな!」
リーダーである私、山本彩は舞台袖でメンバーみんなに声をかける。
♪〜…
「行くで!」
北川謙二のイントロが流れてメンバーは一斉に踊り出す。
これからの8曲はHKTのスキ!スキ!スキップ!に始まって、盛り上がりのいい曲が続く。
パフォーマンスもダンス中心ではなく、メンバーが会場を駆け巡ってファンも一緒に盛り上がるものにした。
♪ずっと気になってたんだ 〜君が付き合ってた彼氏
私とみるきーは自分たちのパートが終わるとそのまま目の前の道を通ってアリーナに向かって走り出す。
なるべくみるきーとくっついて、肩を組みながら走る。
これはスタッフさんに「楽しそうに」と言われたのもあるけど、ぶっちゃけ言うと私はみるきーが好きやし、みるきーも私が好きやから自然とこうなってしまう。
本番を想像しながら笑顔で走る。ふと横を見ると、右隣にはこちらも笑顔のみるきー。
「ふふ、楽しいな!」
「せやね♡」
二人で言葉を交わしてると、アリーナ上の道の十字路にさしかかった。
たしかここでは左に行ッ…!
「あっっ、」
「やっ、」
走ったままの勢いで私が左に曲がろうとすると、肩を組んだみるきーは同時に右に曲がろうとした。
お互いがお互いに引っ張り合う形になって、ほぼ同時にガクンという衝撃が首に伝わった。
「ちょっ、」
体が一瞬止まったあとに衝撃が跳ね返ると、曲がる前に右に寄っていたせいもあって、みるきーが弾き出された。
「うっ…、」
みるきーの姿が一瞬で見えなくなって、体を打ち付けた音とうなり声だけが聞こえた。
「ちょっと、さや姉みるきー大丈夫っ!?」
マイクから大島さんの声が聞こえる。
次の曲でスタンバイしてたんやろう、そのまま数人がこちらに向かって駆けてきた。
「みるきー!」
私は急いでアリーナに降りる。
道の影になって暗くてよく見えへんけど、上向けで倒れてるから背中を強打したんやと思う。
「みるきー?立てる?」
「う…」
背中を強打して息ができないみるきーはそのままうずくまって目をつむっている。
「ちょっと担架お願いします!」
マイクで叫んでスタッフさんを呼ぶ。
音楽も止まって、シーンとした空気が重く感じられる。
「みるきー大丈夫?」
みるきーの背中をさする。
みるきーは黙って頷く。
「ちょっとみるきー大丈夫!?」
総監督や大島さんが駆けつけた。
「たぶん背中から落ちたんやと思います、息がしづらいみたいで…」
みるきーの背中をさすりながら話す。
「ちょっとすいませーん、スタッフさん担架急いでくださーい。」
総監督が落ち着いた声で早口に言う。
「う、もう…大丈夫…。」
「みるきー?」
「ごめんなさい、もう大丈夫です。」
みるきーはうずくまったままつぶやく。
「ちょっと待ってなよ?いま担架来るから!」
大島さんが心配して言う。
「ごめんなさい、担架急いでください!」
会場がざわざわし始める。NMBのメンバーも周りに集まってきて、どんどん重大な雰囲気に。
「さ、やかちゃん…、」
みるきーが私の方を向いて話す。
「だ、大丈夫!?」
「あの…ちょっと息しづらいだけで、ウチ大丈夫なんやけど…、」
「あ、よかったぁ…。でもほんならなんか雰囲気やばいよな…笑」
みるきーはみぞおちを強打して息ができなかっただけらしく、時間とともに楽になったらしい。
でも周りは救急車が駆けつける勢いでやばい空気。
ものすごい数のメンバーが集まってきたし、音楽は止まるしスタッフさんも来るしで大変。
「ちょっと…どうにかしよか…待っててな、みるきー」
そう言って私はみるきーの首元と膝の下に両手を入れてそのまま持ち上げる。
「ちょ、さやかちゃんっ、」
「ごめんなさーい、通してください!(しっ、みるきー。)」
みるきーに口パクで言うとみるきーは顔を赤くして静かになった。
「大丈夫?」「みるきー大丈夫?」「何があったの?」
周りのメンバー心配する声が聞こえる。
「ごめんなさーい、」
人混みをかき分けて総監督のところへ行く。
「ごめんなさい、ちょっと辛そうなんで担架待たずにハケていいですか?」
「あ、いいよいいよ!早く行ってあげて!」
総監督に許可をとって、そそくさと袖の方へ走る。
「みるきー、顔真っ赤やで!」
「やって、めっちゃ見られてんで?//」
「そんなことより、もう大丈夫なん!?」
「ちょっと背中打っただけやから、」
雰囲気に耐えられなさそうなみるきーを見てハケさせようとしただけなんやけど、みるきーはお姫様抱っこされているところをメンバーに見られて相当恥ずかしいのか、私の方に顔を寄せて顔を見られないようにしている。
「みるきーだいじょっ、」
大島さんが私たちのところまで走ってきて、言葉の途中で詰まった。
「えw 顔真っ赤じゃん…てか大丈夫なの?笑」
「あ、あの、なんか大丈夫みたいです…笑」
「あ〜、それは良かったけど…違う意味で大丈夫?笑」
「ごめんなさい…恥ずかしくて…//」
みるきーは少し顔を上げて言った。
「めっずらしいねぇー…みるきーが…」
大島さんがニヤニヤして見ている。
みるきーを見て大事には至らなかったことがわかったのか、だんだんと周りは散っていき、その中から「さや姉イケメンだな笑」とか言う声も聞こえた。
「…ってことなんで…大事をとって一回寝かせます笑」
私が大島さんにそう伝えると、「おう!じゃあ、楽しんできてね〜」なんて茶化すようなこと言うもんだからまたみるきーは私に顔を埋めた。
「照れすぎやって…// まあ、可愛いけど…」
「、」
大島さん…まんざらでもないで?//笑
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