紫黒桜
□壱
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気が付くと周りには自然が広がっていた。
その向こうには田畑も広がっている。
――あぁ、夢。
自分の家の近くにこんな場所はないし、最後に覚えているのが瞼を閉じたところだった。
「――……あ、動ける」
そのことに気付き、上体を起こす。
夢だと解り、自分で動かせる―こんな夢をみるのは珍しい。
いつもと違う夢を見ている―それだけで、少し気分が軽くなった。
コロ
手の中で何かが転がる。
紫黒色の玉だった。
「…この玉のおかげ?」
夢の中で見るほど自分はこの玉に影響を受けていたのか――と思いつつもあまり悪い気はしなかった。
この玉を持っていても大丈夫だろう。
夢だし。
春華は服のポケットに玉を入れようとして固まった。