Another Mirror

□Find my role
1ページ/1ページ

普通グレゴリーホテルに住むとなると、その魂が彷徨ってしまわないために力の強い者と契約を結ぶ必要がある。キャビーを含めた住民の殆どはオーナーであるグレゴリーと契約していた。
そしてアナも同じようにグレゴリーと契約する手筈だが、何故か審判ファーストは必要ないと言う。


「真実の鏡は幻惑に揺さぶられず、本当の自分を見る事が出来る。僕ら審判小僧と一緒で、自我が崩壊する事はないよ」
「本当か?」
「おや、僕らが嘘吐きとは心外だね!」
「悪い悪い。でも万が一というのがあっても困るから」

憤る審判にすぐ謝り、そう言うと、向こうも納得してくれた。
しかし契約が要らないという事を、家主のグレゴリーに伝える必要がある。その際にはアナが真実の鏡だというのも説明しなければならない。アナは隠したいと言っていたが、ここで住むにあたって、隠し続けるのは無理だろう。




アナに了承とってから、キャビーは証明となる審判ファーストと共にグレゴリーの元へと向かう。
ちょうどロビーのカウンターで事務作業していたグレゴリーに声を掛け、先程まであった事や契約のことについて話すと、案の定怪訝な顔を見せた。

「こんな子があの真実の鏡?にわかに信じられんな…」
「そう言うだろうと僕が来たんだよ」
「まぁ…審判小僧の言ってる事を疑うわけではないが、知っているものと随分違うものでな」
「グレゴリーさんは真実の鏡をご存知だったんですか?」


言い方を聞くとまるで別の真実の鏡に会った事があるようだ。
不思議に思い問うと、グレゴリーは頷いて渋い顔をした。

「わしが知っている『真実の鏡』とは真実に貪欲で、そのためなら他人の命、果ては自分の魂まで使う奴じゃ。しかも底なしの知識欲による頭の良さと、 世界まで作り変えるほどの力を併せ持つ上に、傲慢で上から目線という最悪な性格なのだ」
「それは…確かにアナと全然違いますね」
『真実を見るのは好きですけど、そこまでして見たことはないですね…』

どう考えたって優しいアナの性格とはかけ離れているし、そんなことがこれから起こりそうな気配もない。
実にいろんな真実の鏡がいるものだ。


「さてここでの役割じゃが…真実の鏡ならば魂の選別が適しているだろう」
「え、もうですか!?流石に幼すぎるんじゃあ…」

確かにグレゴリーハウスはマフィアの本拠地だ。そこに住むということは構成員の一員として、いつかは勤めを果たさなければいけないが
、アナはまだ12歳だ。
だがグレゴリーはきっと大丈夫だと言う。

「わしの孫だってすでに役割を持っておる。最初のうちから徐々に慣れさせていくのも手じゃ。力の使い方もまだ中途半端なようじゃし、審判ファーストよ、契約は要らんが暫く勉強を見てやれ」
「うん、僕もそのつもりだよ!また親分に話してみるね」

まぁ大人になってからいきなり嫌なものを見せてトラウマになるよりかはマシだろう、とキャビーは渋々納得した。

その時、不意に裾を引っ張られたのでアナを見てみると、メモには『親分ってだあれ?』と書かれていた。

「親分っていうのは審判小僧のお師匠さんで、審判小僧ゴールドという人だよ」
「金ぴかでちょっと目に痛いけど、力のある偉大な人だよ」
『金ぴか?ゴールド?』

そう言えばあの人は他の国へ出張に行っていてまだ帰ってきていない。姿を思い出すだけで目の前がチカチカしそうだが、ファースト同様に真実を見れるものとしてきっと話が合うだろう。

そう話していた時だった。
なにやら玄関の扉の向こうが光ったと思うと、次の瞬間、勢いよく木の扉が開く。そうしてキラキラと金色に光ってハウスに入ってきたのは…


「ジャッジメーン!やぁ諸君久しぶりだな!」


まさに、話題となっていた審判小僧ゴールドその人だった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ