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□[GIFT]春望
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寒い冬が終わり、生き物は暖かい地上に顔を見せるこの季節
迷界はというと、
「…重い。寝るならベッドに行け」
「んーもうちょっと。ミラーの膝気持ちいいんだよ」
地下室で惰眠を貪っていた
久々にタクシーの休暇が取れ、ミラーと共にでいちゃついt…いや、ゆっくり休みを満喫していた。
暖かくなったとはいえまだまだ早春。外は寒いので、暖炉をつけて室内で二人は談笑していた。
だがせっかくの休暇にタクシーがミラーマンと話をするだけで終わる筈も無く、「昼寝する」と頭を乗せた場所はミラーの太股の上、所謂「ひざ枕」だった。
「この時期はどうしても眠たくなるんだって。ほら、昔の中国人も言ってただろ。春眠〜…あれ、なんだっけ?」
「それを言うなら孟浩然の『春眠暁ヲ覚エズ』。しかもそれは朝の寝起きを指すんだよ、昼寝は相当しねぇ」
「え、そうなのか!?やっぱミラー頭良いよな…」
「ふん、お前と比べるな。ていうかさっさと頭を降ろせ!それとひざ枕するのは訳が違う!」
「ちぇっ、ケチ。…じゃあさ」
「っ!?」
起き上がったタクシーは、グイッとミラーマンを引き寄せると、自分の足の間に座らせ後ろから抱きしめた。
「おい…」
「これなら重くないし。それにほら、ミラーって俺の体温好きだろ?」
「…」
肯定否定どちらの声も挙がらない。けれどミラーにとって沈黙はYES。彼は嘘を吐けないから。
こういうのをツンデレと言うのだろう。
証拠にほら
「ミラー、耳赤いぞ」
「うっせ…」
銀髪から覗く耳は朱に染まっている。咎める声も力は無く、むしろ甘い響きを含んでいた。
二人の眠気に誘われて、
春の風はここにも暖かな空気を運びこむ