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□嘘の日
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4月1日、この日はパブリックフォンにとって重要な日であった。



日頃から事ある毎に二人の真実バカに嘘を見破られ、詐欺に失敗し、金蔓には逃げられる。更には超不本意ではあるが従兄弟で、地獄のタクシーがそれを口実にカツアゲしてくる毎日。

生命と存在を保つ最低限の金は補給するものの、趣味娯楽に使う金は最近これっぽっちも入ってこなかった。


だがこの日、明日だけは「嘘を吐いても良い」のだ!

(まさに俺の日だよなぁ〜…)

馬鹿に浮かれながら、エイプリルフールでどれだけ金を貯めれるか考える。もしかすると次の日からは収入が入らなくなる可能性はあった。

「取りあえず死体の家に預かってもらうか…アイツならどっかのボロ車と違って信用出来るし…」
「何ブツブツ言ってるのおじちゃん?」
「誰がおじちゃんだ!!…って、ジェームス!?」

明るく幼い声が聞こえ振り返ると、ホテル支配人の孫のジェームスが満面の笑みを浮かべて立っていた。
迷界一の悪戯小僧がこんな笑い方をしてるということは嫌な予感しかしない。

「ジ、ジェームスいつからそこに…!」
「ん〜とね、おじちゃんが死体の家に預かってもらうか…って言ってたくらいかなぁ」
「な…!ほぼ全てじゃねぇか!!つかおじちゃん言うな!せめてお兄ちゃんだろ!」
「別に変わんないよーだ。それよりさぁ、おじちゃん。ボロ車ってもしかしてタクシーのこと?ニヒヒヒ♪」
「ち、違ぇ!!頼むから何も言うんじゃねぇぞ…!」
「良いよ〜、言わないであげる!」
「へ?なんかあっさり…」
「僕が言わなくても、もう見られちゃってるもんね」

そう言って取り出したのはTVフィッシュとリンクしているカメラ。それにはご丁寧にマイクもついて此方を映していた。ということは…

「…よぉパブリックフォン、誰がボロ車だって?」
「タタタクシー!?違う!これには訳が…」
「この世界に車なんて俺しかいないもんなぁ……だから言い訳なんざ無用なんだよこの糞電話っ!!」
「待っギャアアァア!!」
「わぁー、ペッチャンコだ。キャハハ!」



 
「うう…酷い目にあった…」
「それはなんと言うか…自業自得だよ。フォン」
「死体…お前もか!?お前だけは分かってくれると…思ってないけど!」

ここは墓場の下の干からびた死体が住む家で、フォンの避難所だった。タクシーにボロ糞にされた後、命からがら逃げて来たのだ。

「そりゃどうも。で?明日はどうするんだい?エイプリルフールだからと言ってミラーマンや審判君が黙っているとは思えない」
「フッフッフ、その点については心配ご無用!」

ビシィッ!、と効果音が聞こえるぐらいのドヤ顔で、フォンは高らかに述べた。

「嘘を吐くのは俺だけじゃあない。チビ共も遊びの一環で言うに決まってる。そういうチマチマした嘘まで訂正させるのはいくらミラーマンでも面倒だし、相手はあのガキだ。素直に言って聞くとは思えないだろ?」
「まぁ…確かにそう考えて明日一日中、彼が地下から出てこない可能性はあるね。でも審判君達はどうするんだい?」
「ああ、アイツらは昨日から4日間外界研修があって帰って来ねぇんだ。ラッキーだろ!」
「へぇ、偶然だね。良かったじゃないか」

2つの大きな障害物はこれで消え去り、比較的自由に商売が出来ることになったフォンは上機嫌だ。
 
「さて、金についてはさっき言った通り。信頼してんだからな、頼むぞ!」
「はいはい、別に大丈夫だって。そのくらい構わないしね。」
「さっすが死体ぃ!心の友よー!!」
「良いけどそのネタ古くない?」

そしていつも以上に馬鹿騒ぎしながら、死体とパブリックフォンは夜を飲み明かしたのだった。(死体の酒で)



「あれ、そういえば4月1日って…」

 
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