MAIN(S)

□熱
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・その熱は


(タクシー目線)




暑い___



体内で炎が燻っているような感じがし、俺は身を起こした。


部屋の窓を開けて煙草に火をつける。鏡の部屋ならば、恋人であるミラーマンが厭うそれをここでは何の躊躇いもなく吸った。昼間なら巨大な包丁を持って咎めてくる料理人も、深夜である今は眠っているだろう。


「あちぃ…」

紫煙とともにそう吐くとさらに暑さが増した気がした。


本体が車である俺の体内には当然、エンジンが備わっている。夏の今は、特に熱が籠もって暑くなる。


暑さに苛立ち、ミネラルウォーターを口に含む。だがまったく消えない。じりじりと焼け付く体内の熱は収まることなく、むしろ膨れあがっていくようだった。


捕らえようのない苛立ちにぐしゃりとペットボトルを握りつぶす。空だったため中身は零れていないが、もうそれはそのままゴミ箱へ放り込む。


暑い熱い暑い熱いあついアツイアツイ______




ヒヤリ

いきなり首元にそう感じたが、さして驚きもせず、後ろから伸びてきた手と自分のと重ね合わせる。誰の物かはすぐに分かったから。


「なにをそんなに苛立ってるんだ、タクシー?」
「んー、暑いから」


ミラーの冷たい手が首筋をなぞるたび、体内の熱が下がっていく気がした。それと同時に苛立ちも収まっていく。大分と頭が醒めてから、体を反転させてその体を抱きしめる。

俺とは違う細くしなやかな肌を腕に感じ、熱が完全に収まるのを待っていた。
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